素直さの重要性
ここまでメンタルトレーニングの基本について勉強してきました。
いよいよ実践に入るための「準備運動」に入ります。身体を動かすときと同様にメンタルトレーニングにおいても「準備運動」は欠かせません。
メンタルトレーニング準備運動において重要なことのひとつが「無垢で素直な自分になること」です。
具体的には、指示や頼まれたことに対して条件反射で「はい」と受け入れることを指します。
「なんだそんな簡単なことか」
と思ったかもしれません。
しかし相手が苦手な人であったり、手元の作業がいっぱいで忙しかったりした場合、あるいは自分の心身に余裕がなかった場合は、条件反射で受け入れる返事はできないのです。
条件反射で物事を受け入れられる人は、常に自分の心身に余裕を持っている人といえます。
逆説的な解説になりますが条件反射で物事を受け入れるために、心身に余裕を持つトレーニングをしましょう。
もし今すぐに指示されたことや頼まれたことに取り組むことができない場合は「はい」と返事したあとに今すぐには作業に取りかかることができない旨を素直に話し、
「いつ取りかかれるのか」を相手に伝えて、さらに「変更したスケジュールに問題はないか」と、スケジュール感を確認していきます。
またまた「簡単なことじゃないか」と思いましたか?
素直ではない人、心身に余裕がない人はこの一見、ごく簡単な受け答えができないことがあるのです。
「私の作業が手一杯なことを知っているくせに、新しい指示をするなんて無茶な人だ」と相手を責めたり「いったん引き受けたのだから、多少無理をしても最初のスケジュールで仕上げなければ」と自分で抱え込んでしまったりするなど、メンタルに負担をかける思考に流れてしまったことはありませんか?
メンタルトレーニングの準備運動として大切なことは「はい」という返事の後の会話です。
- 「今から取りかかります」
- 「今は締め切りが近い作業を抱えているので、締め切りを考慮していただけますか?」
- 「手元にあるこの作業と、今いただいた指示はどちらを優先させますか?」
指示や頼まれたことについて疑問や質問があれば、素直にすべてその場で聞きます。
それがあなたのメンタルに負荷をかけない素直なコミュニケーションであり、準備運動としてのメンタルトレーニングです。
「恒常性」と戦う
準備運動としてのメンタルトレーニングはまだあります。
「無垢で素直な自分になる」言動と並行して行えるのが「恒常性と戦う」トレーニングです。
具体的には「やらない・できない理由を探さない」ことです。
頼まれごとをしたとき、心身に余裕がない状態、初めてのことで不安がある場合は断る理由を探すかもしれません。
しかし素直に「はい、わかりました」と返事をします。頼まれごとに対して条件反射で受け入れる返事をするためには「できない・やらない」理由を探さないことが求められます。
相手はあなたを選んで頼みごとをしてきました。他の誰でもなく、あなたを選んだのです。
相手が誰であろうと、信頼に応えなくてはいけません。
「できない・やらない」理由を探す脳の行動は、自信のなさと自分を卑下する行動の裏返しといえます。
- 「どうせ自分にはできないから」
- 「きっと失敗する」
起こってもいない未来を失敗すると決めつけ「行動しない」ことによって、自分を守ろうとしているのかもしれません。
しかし「できない・やらない」理由を探していては、人生を明るく切り開くメンタルは手に入りません。
頼まれごとは、条件反射で「はい」です。一度口から出た言葉は取り消せないため、頼まれたことを引き受けたら必ず成果を出さなくてはいけません。
頼まれごとを引き受けたあとに必要ならばスケジュールの調整を行い、自分の手に余ることが出てきたら、周囲への協力を求めましょう。素直に、かつ「できない・やらない」理由を探さずに。
素直さと「やらない・できない理由探しをしないこと」は常にセットです。
誠実に行動する
他者との関係がなければ、人生は豊かになりません。
他者はあなたを攻撃することもあるかもしれませんが、あなたがメンタルをトレーニングすることによって、ダメージを回避することも可能です。
メンタルをトレーニングできる、と思えば、仮に攻撃的な人が身近にいても「メンタルがトレーニングできてありがたい」「この人のおかげで私は強くなれた」と感謝できるシーンもあるでしょう。
もちろんそんな攻撃的な人と、引き続きお付き合いすることはありません。
メンタルトレーニングのひとつとして「何事にも感謝する」ことを実行しているだけですから。
あなたを傷つける人の言動は、反面教師となって「あのような言動は慎もう」とあなたを律してくれます。
そのとき心の中で「あの人のおかげで私は誰かを攻撃せずに済んだ」と感謝し、他者への攻撃を慎むことを誠実に実行しましょう。
何事にも感謝し、誠実な行動を実行することであなたのメンタルはトレーニングされていきます。
プラスアルファでできることは「第三者の存在に関係なく誠実に行動すること」です。
誰かが見ているから誠実に行動しよう、はトレーニングの初歩でしかありません。誰かの視線を気にしているうちは「誠実であろうと意識している」からです。
- たとえ誰もいなくても車が通っていなくても、赤信号なら渡らず交通ルールを守る。
- ごみが落ちていたら拾ってゴミ箱に入れる。
- 公共施設を利用したら、あとに利用する人のためにその場をキレイに整える。
このような愚直なまでに誠実な行動を習慣づけることができれば、あなたのメンタルトレーニングは一定の成果を上げているといっていいでしょう。
誰に対して誠実な行動か、というと他ならぬ「あなた自身」に対してです。
なぜなら何事にも感謝し、誠実に行動することはあなたのメンタルを磨き上げるトレーニングだからです。
「こんな行動は偽善だ」
と誰かから言われたとしても気にすることはありません。
あなたはあなたのためにメンタルをトレーニングしているだけであり、第三者の意見は必要としていないからです。
総合的なメンタルトレーニングとは
素直、やる、何事にも感謝し誠実にをすべて実行できるメンタルトレーニングが「教えてもらう」行為です。
「教えてもらう」までには
- 自分の知識やスキルが不足していることを自覚する(素直さ)
- 知識不足やスキル不足を満たしてくれる人物を探す(やらない選択を、しない)
- 教えてもらう時間を割いてくれることに感謝する(何事にも感謝)
- 誠実に教えを乞う(誠実に行動する)
という複数のメンタルトレーニングが含まれています。
このうちのひとつでも「NO」「やらない」「できない」という選択をしてしまうと、自分の知識やスキルは足りないまま満たされることがないのです。
素直さすらトレーニングせず「自分のスキルや知識は十分である」と誤った認識をしてしまうと、そこから一切成長することはできません。
当然、人生は豊かにはならず、年齢を経れば経るほど生き抜くことは難しくなっていくでしょう。
「知らない」ことも「わからない」ことも恥ずかしいことではありません。
「知らない」「わからない」ことすら自覚できない人の方が、よほど恥ずかしいといえます。
知らないことを「知らない」わからないことを「わからない」と素直に認められる人には、おそらく自然と教えてくれる人が集まるでしょう。
なぜなら「知らない」「わからない」自分を自覚し、素直に教えを乞う準備ができているからです。
「知らない」「わからない」ことを恥ずかしい、と思っている人にわざわざ貴重な時間を割いて教えてくれる人はいません。
「あいつに教えても耳を貸さないから」と言われて終わりです。
「この部分は知らない(わからない)ので、お時間あるときに教えていただけませんか?」
と言うトレーニングをしましょう。このひと言で、4つのメンタルトレーニングとしての準備運動ができます。
「教えてもらう」トレーニングを実践する際には、言語表現力の訓練方法を活かすことが可能です。
言語表現力とは「相手にどれだけわかりやすくメッセージを伝えられるか」を表すスキルで、相手に伝わりやすい具体例をだしたり、相手の年代に合わせて使う言葉を変えたりすることを指します。
- 「自分が何を、なぜ教えてもらいたいのか」
- 「どこまで理解できているのか」
を相手にわかりやすく伝えられてこそ「教えてもらう」ことができるのです。
また、仕事の話ばかりではなく時事に関する話題で場をなごませられるよう、TwitterやLINEニュースといった即時性の高いツールを活用して、若者向けのトレンドを簡単にチェックできるので目を通しておくのもおすすめです。
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」
ということわざがありますが、メンタルトレーニングにおいては
「聞くは準備運動、聞かぬことこそ一生の恥」
と覚えておきましょう。
確認問題
では、第3章で学んだことを確認してみましょう。