第2章:メンタルトレーニングの基本

では、ここからはメンタルトレーニングの基本を学んでいきます。

肯定的思考を身につける

メンタルトレーニングに必要なことは「事実のとらえ方を肯定的に変える」ことです。同じ事実であってもポジティブにとらえることで心身へのダメージを避けることができます。

基本のメンタルトレーニングとしてまずは

メンタルへのダメージを避ける」方法を学びましょう。

メンタルへのダメージを避けるには

  • ポジティブ思考
  • 否定しない
  • スルーする

といった方法があります。

晴れた日に「いい天気だ」「出かけよう」と考えることができれば、好きなファッションに身を包み、出かけたくなるでしょう。きっと足取りも軽いのではないでしょうか。

一方で「日焼けしそうな天気だ」と考えてしまうと、

  • 「日焼けしたくない」
  • 「出かけたくない」

と次々とネガティブな感情が出てしまい、結果として「出かけない」という結果になってしまうでしょう。

「出かけたくない」が続いてしまうと、人との関係が希薄になり、コミュニケーションがとりづらくなった結果、孤独になってしまうといった「負の連鎖」を招くことがあります。

同じ「晴れ」という天気をポジティブに解釈するとメンタルへのダメージを回避でき、ネガティブにとらえると「負の連鎖」の入り口に片足を踏み入れることになるのです。

最初は、ほんの少しの「考え方の違い」かもしれません。毎日ポジティブな選択を続けると、メンタルはどんどん自分を守る考え方を覚えていきます。

一方でネガティブな選択を毎日続けていくと、メンタルへのダメージが日々積み重なってしまうのです。

「ほんの少し」の積み重ねを、軽く考えてはいけません。

たとえ誰かに「こんな天気だと日焼けするのに、外出するなんておかしい」と言われたとしても「晴れの天気が好きで、私は出かけたいのだから」と思えば、他人の言葉を気にしないで済むでしょう。

あなたが出かけたところで「おかしい」といった人が迷惑を被るわけではありません。まったく無関係なのに他人の行動を非難する人の言葉など、真摯に受け止める必要はないのです。

何事も「ポジティブに」「否定せず」「ダメージはスルーする」ことを心がけてトレーニングしましょう。

メンタルブロックの解除法

「自分は頭が悪い」「自分は太っているから恋人ができない」と自分を否定し、行動しない思い込みをしている人を見かけることがあります。

この自分を否定し、行動しない思い込みのことをメンタルブロックといいます。

もしあなたが自分自身を否定する思い込みをしていたら、今すぐ自分を肯定する言葉に置き換えてください。これがメンタルブロックを解除する方法です。

脳は否定の言葉を理解できないと言われています。この解釈はさまざまですがひとつには「否定の言葉を強く意識してしまう」人間の行動が、脳が否定形を理解できないと言われる理由です。

赤い猫をイメージしないでください

と言われたら、脳に赤い猫を思い浮かべます。この理論と人間の行動から、思い込みが招く負の連鎖の恐ろしさがわかります。

自分を否定する言葉を自分に言い聞かせ続けると「否定したい自分」を脳がイメージし続けてしまうのです。

「否定したい自分」をイメージし続ければいずれ「否定したい自分」であろう、と行動してしまうのです。自分が変わらない原因を「否定したい自分だから、しかたない」と思い込むようになります。

これが「思い込みの怖さ」です。

では、どうやって思い込みを外していくのでしょうか。思い込みを外す方法は、ポジティブな言葉に言い換えることです。

できないことに注目せず、できることに集中して自分に言い聞かせます。

勉強が苦手なら、得意なことを探しましょう。好きなことと自分を、自分の言葉で強く結びつけるのです。

  • 「甘いものが好き(な自分が大好き)」
  • 「苦手なことも好き」
  • 「今の、ありのままの自分が好き」

声に出して、ネガティブな思い込みから自分を解放してあげましょう。

自他境界を知る

自他境界」とは自分と他者との境目、またはそう認識することをいいます。

自分の機嫌が悪くなったとき、そのイライラを他人にぶつけたことはないでしょうか。八つ当たりというやつです。

八つ当たりは自分のストレスを他人に転移する行為なので、やってはいけないことです。

メンタルトレーニングをすれば、自分にストレスが溜まったときや機嫌が悪いとき、ネガティブなエネルギーが爆発しそうなときに、どのような行動をすればよいかがわかります。

メンタルトレーニングでは、自分と他人の感情を「切り分ける」ことを行います。

あなたが今、抱えているネガティブなエネルギーは、あなたが原因でしょうか?

あなたのその怒りや悲しみは、あなた自身の経験からくるものですか?

もしかしたらあなたが今抱えているネガティブなエネルギーは、あなたではない「誰か」の怒りや悲しみかもしれません。

ではどうやって自分と他人の感情を「切り分ける」のでしょうか。切り分けるにはまず、ネガティブなエネルギーの原因(発生源)に注目します。

  • 自分でコントロールできることか(例:どうして自分は〇〇できないのか)
  • 他人をコントロールしたいのか(例:どうしてあの人は〇〇しない(する)のか)

原因が自分にあるなら、解決すべく行動しなくてはいけません。怒りや悲しみのエネルギーにメンタルを支配されている時間はあなたにとって「無駄な時間」です。

自分の機嫌を、自分でとるのです。

  • 早めに寝る。
  • 欲しかったものを買う。
  • 美味しいものを食べる。
  • 思いっきり楽しいことをする。

自分をポジティブで楽しいエネルギーで満たせる行動をとり、自分の感情コントロールを取り戻しましょう。

原因が他人にあるなら、その怒りや悲しみのエネルギーを手放す必要があります。その怒りや悲しみは「他の誰か」のものであり、あなたのものではないからです。

他人の怒りや悲しみのエネルギーを手放すには「期待を捨てる」ことが必要です。

相手への期待を持つと、叶えられなかったときそれが怒りや悲しみになってしまいます。相手はあなたが期待していることを知らないので、あなたの思い通りには行動してくれません。

家族であろうと親子であろうと別の人間同士である以上、相手をコントロールすることはできないのです。

誰かへの怒りを感じたら「自分が勝手に期待してしまっただけではないか」と振り返ってみましょう。

そのあとプラスアルファできるなら「あの人と自分はこんなに考え方が違うんだな」と、考え方や言動の違いを楽しんでみてくださいね。

肯定的解釈を定着させる

肯定的解釈とは、目の前の事実を肯定的に受け止めることを意味します。

外出先で突然、雨が降ってきたとします。雨具は持っていません。そういう事態になったとしても雨に濡れずに行ける場所にコンビニあり、傘を買うことができたら「濡れずに傘が買えてよかった」と考えます。

もし雨で服が濡れてしまったとしても「せっかくだからクリーニングに出してもっときれいにしよう」でもいいです。

たとえば友人と出かけていたとして「濡れずに傘が買えてよかったね」と言ってくれる人と、「天気予報をどうして見てこなかったの?」という人がいたら、どちらとこの先も友人でいたいとおもうでしょうか。

もちろん「濡れずに傘が買えてよかったね」と言ってくれる友人です。

前向きな言葉は自分に向けてだけではなく、その言葉を聞く周囲の人たちにもポジティブな影響を与えてくれるのです。

同じ「突然の雨」という事実を、ポジティブに受け止め肯定できるかどうかです。発した言葉は気持ちとなり、他人に伝わります。

つまりポジティブでいること、肯定することを続けていれば、自然と人間関係もポジティブな思考の人たちに変わっていくのです。

ポジティブな人間関係ができれば、メンタルへダメージを与える言動をする人を遠ざける効果が期待できるでしょう。

結果的に、何事も肯定するポジティブな言動がメンタルをダメージから守ってくれます。

自己理解と他者理解

自己理解は読んで字のまま「自分が何者か理解すること」である一方で他者理解とは「他者とは、自分と同じように主体性のある存在」と理解することを意味します。

他人と自分の考え方や能力に差があること、違うことは当然です。

なぜなら別の環境で育ってきた人間同士だからです。

社会において長年異なる環境で生活してきた人間同士が関わると、それぞれの考え方の違いが浮き彫りになります。

なぜあの人は自分と違う考え方をするのだろう

と、ときに自分が正しいことを前提に、相手を責めたくなることもあるかもしれません。

ただ、異なる環境で生活してきた人間同士の考え方が違うのは当たり前のことなので、正しく他者理解をしていれば「どちらが正しい」や「正解」はあり得ません。

メンタルトレーニングの一環として、他人と考え方や能力に差があること、違うことは、ネガティブなことである、という考え方を改める必要があるでしょう。

あらゆる人が異なる能力をもち、違う考え方をしているからこそ、さまざまなサービスや商品が生まれ生活が豊かになるのです。

他人と考え方が違うことは、実は価値のあることだといえます。自分との差を見つけ、知ることで自分の世界を広げることができるのです。

むしろ生き方がまったく違うはずの他人が、自分とまったく同じ考え方や能力であったときのほうが、よほど恐怖ではないでしょうか。

「違い」や「差」はあなたの世界を広げ、新たな知識を与えてくれます。だから他人と自分の考え方が異なるからといって否定したり、他人をシャットアウトしたりしてはいけません。

自分にまだない知識や「どう違うのか」を知るために、相手に教えを乞うチャンスととらえましょう。知らないことを知らない、と言い、教えを乞うことは恥ずかしいことではありません。

一定の年齢を超え、社会人としてのキャリアを築いている場合は、誰かに教えを乞うことはもしかしたら難しい、と感じることもあるでしょう。

「難しい」と感じたら、考え方を変えてみましょう。この時がメンタルトレーニングの機会です。

「なぜ難しいのか」を自分に問いかけましょう。

自己分析するわけです。

自己分析することで自分のネガティブな面、苦手な面と向き合うことになります。

そのネガティブな面や苦手な面は、もしかしたら他人の考え方を受け入れ、教えを乞うことで克服できるかもしれません。

プライドは自分を守る鎧ではなく、他人を拒絶する壁です。

たった一人山奥にでもこもって隠遁生活をする覚悟がなければ、他人を拒絶する壁は取り払わなければいけません。

自分と違う考え方は、あなたの人間的価値をも上げてくれる、価値のあるものなのです。

自分と異なる考え方を否定したり、他人との壁を作らないようにするには、自分を深く掘り下げて苦手なことと向き合い、もしできないことがあるとしたら「できない事実」をそのままに受け止めることが求められます。

「できない」は、「これまでできなかった」「今できていない」というだけの話です。

努力すれば未来は変えられるでしょう。

自分の未来を変えてくれるヒントが、他者への理解であり、自分と違う考え方なのです。

確認問題

では、第2章で学んだことを確認してみましょう。