第5章:他人と区別するための「自分を知る」行動ポイント

エンジンキーを見つける

次のメンタルトレーニングは「自分のエンジンキー(ポジティブに動けるモチベーション)」を見つける」ことです。

たとえば仕事に行きたくない朝でも「この朝食を食べたいから仕事に行く」といったきっかけをできれば複数見つけましょう。

自分のエンジンキーを見つける作業は、自分の「好き」に火をつける作業です。

エンジンキーが見つかったら「なぜ私はこれをエンジンキーとしているのか」を深堀りして考えてみることをおすすめします。

おすすめします、というか必ずやりましょう。

深堀りのポイントは

  1. エンジンキーによってポジティブに動ける行動は何か(特定の仕事がはかどる など)
  2. エンジンキーによっていつどのような行動をとったか(仕事に行きたくない日でも仕事に行こうと思える など)
  3. エンジンキーによって起こした行動の結果はどうなったか(いつも特定の仕事がはかどっている、仕事に行くことが苦ではなくなった など)

を洗い出すことです。

行動を洗い出せたら、紙に書き留めて覚えておきましょう。スマートフォンのカメラで書き留めた内容を撮影しておくと、いつでも振り返ることができますね。

自分のエンジンキーを常に意識することで、いつどのような状況になってもポジティブに動くスイッチを自分で入れることができるのです。

エンジンキーを手に入れることは、メンタルをネガティブにしない防波堤にもなります。

人間ですから時には目標を見失ったり、ミスをしたり、立ち止まったりすることもあるでしょう。

前に進めなくなったときメンタルをネガティブな感情に支配されるかどうかの分かれ目、分水嶺となるものがエンジンキーの有無です。

第4章:基礎トレーニングとしてのメンタルトレーニング法の「とにかく行動する」で、

自分の意思で「止まる」ことは後退を意味する

第4章:基礎トレーニングとしてのメンタルトレーニング法の「とにかく行動する」

と学びました。

エンジンキーはあなたが常に動き続ける大きなモチベーションとなり、メンタルを下支えするものなのです。

欲求のマネジメント

エンジンキーを手に入れたら、次は「自分の欲求を素直に受け止める」メンタルトレーニングです。

「自分の欲求を素直に受け止める」とは、自分のやりたいことを、

  • 「誰かに知られると恥ずかしいから」
  • 「年齢に合っていない」

といったやらない理由を探さずに「やりたい」と認めることを指します。

もちろん法律を犯す行動は、いかに自分に素直になるとはいえやってはいけません。

他人の視線や今後の人生、家族のことを考えずに、法律を犯さない範囲で自分の欲望のままに行動しても良いのなら、思いっきり行動できるかもしれません。

しかし他人の目はあるし、今後の人付き合いのことも考えなければなりません。家族を悲しませる行動かもしれないのです。

たとえば

  • 「ひとり放浪の旅に出たい」
  • 「性別や年齢、職業に関わらず、好きなファッションをしたい」
  • 「あの人に自分の気持ちを伝えたい」

という欲求があったとしても

「でも、できない。なぜなら……」

とやらない理由を探して、自分をごまかしていませんか?

今回のメンタルトレーニングを機会に、今あなたの欲求をあなた自身が受け入れてください。

ぜひ声に出しましょう。

上記の例を言い換えるなら

  • 「いつか、絶対ひとり放浪の旅に出る」
  • 「好きなファッションに身を包んだ自分が、好きだ」
  • 「私はあの人が好き(嫌い・苦手)だ」

自分の言葉で自分の欲求を肯定することで、これまで見ないふりをしてきた自分の欲求を素直に受け入れることができます。

そしてその欲求を実現させるためには、どのようにして周囲との調和をとればよいのかという「実現可能性を探る」思考が生まれるのです。

これは、メンタルのフェーズをひとつ上に上げることを意味します。

あなた自身が自分を否定していては、あなたのメンタルのトレーニングは進んでいきません。

どんなにネガティブな欲求であったとしても、肯定する考え方で受け止めることによってメンタルトレーニングを一歩先に進めることができるのです。

嫉妬とのつきあい方

人は誰でもなにがしかのコンプレックスを持っているものです。

コンプレックスは、他人と自分を比較したときの「劣等感・無力感・嫉妬」から生まれます。

今回のメンタルトレーニングは「嫉妬の正体を知り、つきあい方を知る」ことです。

自分にないものを持っている人をみたとき

  • 「うらやましい」
  • 「どうして自分ではないのか」

と嫉妬した経験もあるでしょう。

嫉妬の感情を抱いたとき、同時に何かに対する怒りを感じたことはないでしょうか。

その「何かに対する怒り」の原因のひとつは「嫉妬していることそのものを恥じている状態」です。

「嫉妬」をネガティブなものである、嫉妬することそのものを恥ずかしいと感じているからこそ、嫉妬する自分自身に怒りに似た感情を抱くのです。これが嫉妬の正体です。

メンタルトレーニングにおける嫉妬のコントロール法の基本は、第2章:メンタルトレーニングの基本の「自他の境界線を知る」です。

  • 「うらやましいと思いつつ、自分は努力しているのか」(=自分でコントロールできること)
  • 「自分の努力だけでは、相手との差を埋められない」(=他人のコントロールによること)

努力することで嫉妬の原因が解消されるなら、嫉妬に身を焦がさずに努力したほうが、あなた自身にとってポジティブな結果をもたらすでしょう。

一方であなた自身が努力したところで、相手との差は埋められない現実もあるでしょう。

自分でコントロールできないことに振り回され続け、メンタルに負荷をかけ続けるのは、人生の浪費でしかありません。

この切り分けができ、嫉妬の正体がわかれば、おそらく燃えたぎるようなネガティブな嫉妬の感情は薄れていくでしょう。

嫉妬の原因を切り分けていく過程で、嫉妬の感情そのものをあなたは受け入れることができます。嫉妬することや感情を否定してはいけません。嫉妬の感情のあなたの一部だからです。

嫉妬の存在を認め、正体を切り分け、原因を知り、自分でコントロールしましょう。嫉妬の正体を知るメンタルトレーニングを終えたとき、あなたの中で「嫉妬」はポジティブなものに変わっているはずです。

自己概念の歪曲を知る

次のメンタルトレーニングは「自己概念の歪曲を知る」ことです。

自己概念とは、自分が自分にどんなイメージをもっているか、また自分で自分をどう評価しているかといった自己に対するイメージのことです。

歪曲とは、事実を自分の基準で判断して、極端に思い込んでしまうことを指します。

メンタルトレーニングにおいて自己概念の歪曲とは、事実とは異なるのに「自分で自分にネガティブなイメージをもっていること」といえるでしょう。

たとえば「苦手なこと」に対する思い込みが、ひとつの例として挙げられます。

食べ物の好き嫌い、読書や映画の傾向、人付き合いなど「苦手」の種類はさまざまです。しかし「食べず嫌い」のように本当は苦手ではないのに、苦手と思い込んでしまっているケースは少なくありません。

この苦手を自分でコントロールできるようになることで、苦手によるダメージからメンタルを守ることができます。

上述した「食べず嫌い」なら「この食べ物のどこが苦手なのか」を細かく分類しましょう。

ニオイ、調理法による食感、見た目、味などいくつかの要素に分けられます。ニオイが苦手なら、ニオイが出ない調理法を試す方法が浮かび上がります。

特定の調理法による食感が苦手なら、その調理法以外のレシピで作ればいいのです。苦手なものとその原因を分析することで、苦手に対する対処法がわかります。

苦手の原因を分析するにあたっては「第三者に言葉で詳しく説明できる」レベルにまで、文章に落とし込めると、ベストです。

なぜなら第三者にわかるレベルにまで文章化できたら、自分では忘れようがないほど記憶に焼き付くからです。

自分ではどうしようもない「苦手」な要素もあるでしょう。自分でコントロールできない「苦手」とは正面から向き合う必要はありません(メンタルトレーニングにおいては)。

苦手を知って、上手に付き合う方法を学びます。苦手がヒトであった場合の対処法は、モノとは少し異なります。

どのようなシーンの、どのような言動が苦手か、まで細かく原因を探る必要があるからです。

「あの人も、アレさえなければいい人なのだけど……」

と感じたことはないでしょうか。

相手に止めてほしい「アレ」を避ける方法を見つけていきます。具体的には相手が起こす、自分にとって苦手な言動別に自分の行動をパターン化します。

  • 「こう言われたら、こう返事する」
  • 「これを言われたら、同意する」
  • 「これを言われたら、曖昧な返事だけしてその場を離れる」

パターン化したらまずは実践しましょう。

もし苦手な相手と離れることができて、実践のチャンスがなくなれば、もちろんメンタルに負荷のかかる実践は必要ありません。

どうしても苦手な相手と離れられない場合にのみ、実践します。

実践して相手の感情も損ねず、自分のメンタルを守ることもできたら、そのパターンを「採用」するのです。

複数の成功パターンを採用できれば、あなたの「苦手」によるメンタルダメージを今後、大きく減らすことができるでしょう。

ただし実践には、メンタルダメージが伴うものです。トレーニング中とはいえ負荷のかけすぎ、やりすぎはくれぐれも避けてください。

確認問題

では、第5章で学んだことを確認してみましょう。