第5章:自分を変える習慣

良い人間関係をつくる

ここからは、まとめに入っていきます。大事なところを振り返って確認していきましょう。

良い人間関係をつくるためには、5つの重要なポイントがあります。

  • 尊敬:礼節の心を持って、人と接すること。人はみな、尊敬すべき点を持っている。
  • 信頼:相手を無条件で信じて、受け入れること。相手の善意を探しながら信じていきます。
  • 共感:相手の立場になって考えられること。相手の関心事に、興味を持つ。
  • 協力:目標に向かってともに努力する。相手と一緒に、目標達成・問題解決を図る。
  • 寛容:相手を認めて許すこと。自分と違う価値観も受け入れる。それには尊敬・信頼が大切。

5つのポイントを習慣化

尊敬・信頼の心を持って相手と接して、相手の立場になって共感していきます。そして、相手と共通する目標に対して協力し、そのときに寛容の心を忘れないようにしましょう。これらの行動を習慣にしていきます。

人間関係が上手くいかないと感じたら、5つのポイントのうちのどれかが欠けている証拠です。欠けている部分を変えていく習慣づけを心掛けましょう。

少しずつ自分を変えていくことで、相手と良好な人間関係を築いていくことができます。

自分自身を勇気づける

勇気づけの3つのポイント

勇気とは、人間関係上の困難を克服して乗り越える力です。その力を与えるのが勇気づけです。自分自身への勇気づけを習慣化するとき、まずは「所属感・信頼感・貢献感」の3つの感覚を持つことが重要です。

  • 所属感:自分は居場所を持っているという感覚。職場・家庭の中で、自分が存在していることに自信を持ちましょう。
  • 信頼感:周囲の人を信用しようとする感覚。
  • 貢献感:人や職場など、自分が社会の役に立っていると実感する感覚。

これらが、自分自身を勇気づけるための土台です。

勇気づける3つの習慣

勇気づけるための3つの習慣は、

  • 断言する
  • イメージする
  • 行動する

これら3つを習慣化していきます。

たとえば「この仕事を絶対にやり遂げる」と声に出して断言します。独り言でも問題ありません。

次に仕事をやり遂げるためのシミュレーションを頭の中でイメージしていきます。そしてイメージした通りに仕事をするために行動していきます。

このときに「職場・家族・地域」などに所属して、周囲と信頼関係があって貢献している感覚を忘れないようにします。アドラー心理学は、特に貢献感を重視しています。

他者を勇気づける

苦手意識をなくしていく

自分自身の勇気づけができるようになったら、次は他者への勇気づけを習慣化していきます。

他者を勇気づけることができれば、苦手な人が少なくなっていきます。相手を勇気づけることで、お互いの関係がよくなっていくからです。

たとえば「別の着眼点の指摘に助けられました。ありがとうございます。」とあなたが苦手な相手に勇気づけをしたとします。すると相手は「あなたに自分が肯定された」と感じるでしょう。

このようなやり取りの積み重ねによって、相手はあなたを信用して安心してつき合える感覚を持ちます。これが信頼関係です。こうなると、相手からは苦手な人ではなくなっているはず。あなたもいつの間にか、相手への苦手意識が消えていきます。

人生に意味を与える

どんな人生が良い?

あなたの人生の意味は何でしょうか。

もしあなたが死を迎えるとき「良い人生だったな」と思えれば、あなたにとって意味のある人生だったと言えます。

今日仮に死を迎えることになったとしたら、あなたはどう思うでしょうか。大きな目標に向かって進んでいるのに、まだやり遂げていなかったら残念に思います。

しかし、そうだったとしても、いつ死んでも満足できるという生き方があります。それは、共同体へ貢献する生き方です。

共同体に貢献

アドラー心理学では、共同体への貢献を重視していて、その意義を大切に考えています。貢献することで、世の中の役に立っているということを実感して、自分の存在を確認することができるからです。

具体的には、自分のライフタスクにおける職場の人、友達、家族との間で勇気づけを行って、共同体を形づくり貢献することを目指していきます。

人は一人で生きていくことはできません。周囲の人から必要とされることに喜びを感じる動物です。その意味でアドラーは「共同体への貢献こそが、人生の真の意味」としています。

自分は周囲に貢献しており、周囲からも必要とされている

このように実感しながら生活できれば、仮に今日死を迎えることになっても、後悔からやるせない気持ちになることはありません。人は必ず死を迎えます。意味のある人生を歩んでいきましょう。

共同体感覚を身につける

アドラー心理学が目指すもの

アドラー心理学で、個人が幸福になるためにいきつくところにあるのが共同体感覚です。

職場や家庭、地域などにおいて、周りと結びついているという感覚です。それには、所属しているなかで共通感覚をもつようにします。私的論理を展開しないで、周りの人に関心を持って接していきます。そして周りを信頼して貢献していきましょう。

すると、全体の一部になる感覚を得ることができます。これが共同体感覚です。その時あなたは、共同体の中で有用な人間になって、自分の人生に意味を感じているでしょう。

完璧より向上を!

アドラー心理学に基づいた生活を送るのは、とても難しいことです。実践には、人生の半分の年月が必要という例もあります。今すぐ完璧に実行するのは無理です。

また勇気くじきをしてしまった」と失敗したら、失敗を認めて軌道修正をしていきます。軌道修正を重ねていくと、やがて習慣化していきます。不完全な自分も受け入れて、向上していくことに力を注いでいきます。

意識し続けていくことで、人間関係の悩みは少しずつなくなっていきます。

確認問題

第5章で学んだことを確認してみましょう。