第4章:習慣を変える

習慣は変えられる

習慣の意味とは?

「勇気づけ」「目的志向」「劣等感をバネに」などの、様々なアドラー心理学の考え方を紹介してきました。あとは実践しながら身につけていきます。

頭ではわかっていても、これまでの習慣がしみついているため、なかなか行動と結びつけられないと思うかもしれません。それでは、習慣とは何でしょうか。

たとえば、目玉焼きに何をかけて食べますか?と尋ねると、ソース、しょう油、塩こしょうなど答えが分かれます。これらは、無意識的に長年何気なく続けてきたことではないでしょうか。それが習慣といいます。

意識しなければ変えることは難しいですが、変えようと意識すれば容易に変えることができます。

パターン化から脱却

習慣を自覚

習慣的な行動は日常生活の中でさりげなく、そして心地よく行われています。無自覚であることが多いので、まずは習慣に目を向けて意識し始めることからやっていきます。

たとえば「夜寝る前にお酒を飲む」という習慣があるとします。これは生活の中でパターン化されていて、意識することなくさりげなく心地よく行われています。しかし、出張に行ったとき、ホテルにお酒がないことに気づいて、めんどうな思いをして外に買いに出ました。この時、夜寝る前にお酒が欲しくならなければよいのにと思いました。

心地よさがなくなったことによって、寝る前にお酒を飲むという習慣が自覚できたということです。

「でも」ではなく「だから」と思うようにする

習慣を自覚した後は、考え方を変えていきます。

寝る前にお酒が欲しくならないようになりたい。でも飲みたい」これが習慣化されている時の思考です。

この「でも」と思うことをやめていきます。代わりに「だから」と思っていきます。

寝る前にお酒が欲しくならないようになりたい。だから飲まない」このように考えて実行していきます。「やめよう」「変えよう」と決意した習慣化に対して、やってしまいそうになったことにまず気づいていきます。そして、「でも」と思わないで「だから」と思うようにしていくのがコツです。

そうすると、パターン化した習慣から脱却する足がかりになります。

習慣づけまでの3段階

ぎくしゃくした行動も習慣に

さりげなく心地よくできる行動であると述べましたが、無自覚に苦労せずにやれてしまうのが習慣です。

そのような習慣を変えようとしたとき、始めはすんなりとこなせないのが普通です。心地よさもなく、ぎくしゃくした行動になります。

たとえば「仕事の仲間にダメ出しをしないで、感謝の言葉を伝える」と決めたとします。しかし、最初は言葉を言いかけて口をつぐんだり、間の悪いタイミングで言ったりしてしまう場合もあります。

この段階では、相手に感謝の気持ちは伝わらないかもしれません。しかし、そこで諦めてはいけません。継続していくと、やがてなめらかに、よいタイミングで話せるようになります。

ここまでくると、新しい行動を習慣化できたということになります。

決断→実行→継続

習慣が身につくまでの実践方法は、まずは決断していくことです。そして実際に実行することです。それを継続していくことです。

たとえば「仕事をしながらお菓子を食べるにはやめる!」これが決断です。次にお菓子を食べないのが実行です。はじめは心地よくありませんが、続けていくことが継続になります。

この延長線上に、お菓子を食べなくても心地よくさりげなく仕事ができる習慣ができあがります。

このように、行動や考え方の直したいと思っている悪い習慣も、良い習慣に変えていくことができます。最初は上手くいかなくても、まだまだ初期の段階なのだと思って、継続していくことが大切です。

共通感覚を養う

相手の観点から物事を見る

共通感覚は、相手との共同目標に向かうためにも大切な感覚です。相手と一体の感情を持って、共通感覚を身につけるには、どのようにしていけばよいでしょうか。

共通感覚と同情は違います。相手と一体の感情を持つには、感情や同情に流されずに相手を信頼・尊敬してみることが重要です。それには、物事を私的論理で見るのではなく、相手の立場・観点から見ていきます。

たとえば、仕事に追われて困っている部下がいるとします。それに対して「代わりに仕事をやってあげよう」とおもったことはありませんか?

これは相手と一体の感情を持ったように見えるかもしれませんが、そこには同情や「君ではだめだからやってやる」という気持ちがないでしょうか。これが私的論です。そして、代わりに仕事をしてしまっては部下が育ちません。

そうではなく、相手の目的に立ち返って「部下が時間内に仕事を終わらせる方法」を考えていきます。これが相手の観点から物事を見るということです。

過剰な親切は対人関係を悪化させる

過剰な親切はNG

人が喜ぶのを嬉しく思うのは自然で、親切にすることはとても良いことです。しかし、そのために自分がつらい思いをするのでは本末転倒です。まずは、自分の過剰な親切に気づくことから始めていきます。

たとえば「今日のアルバイト、私の代わりにでてくれない?」と先輩に頼まれたとします。自分には用事がありますが、先輩の懇願する顔を見て「何とかしたい」と考えます。

その結果、自分は想定外の苦労を背負い込んでしまいます。これが過剰な親切です。仮に断ったとしても、先輩はそれほど気を悪くしなかったろうし、実際には苦労に見合うほど先輩は喜んでくれません。

小さな親切でもそうですが、なんでも他人を優先してしまう人がいますが、まずは自分がつらい思いをしないかどうかを考えて行動することが大切です。

断ることを迷わない!

過剰な親切をしてしまいそうになったら「でも」から離れて迷わずにきっぱり断りましょう。断る勇気を発揮させて、自分に考える暇を与えないように心掛ければ問題ありません。

今日は私もダメなんです。代わってさしあげたいけどすみません。

正直に堂々と断りましょう。過剰な親切は自分を苦しめるということを忘れないようにしましょう。

確認問題

第4章で学んだことを確認してみましょう。