第6章:ケーススタディ

自己解決編:現在の仕事をやめたい

「入社して3ヶ月経ち、今の仕事を続ける自信がなくなったAさん。もともと自信がなかった営業職に配属されて、想像以上に仕事ができない。最初は先輩を真似て頑張っていましたが、いつまでも失敗続きです。会社をやめた方がいいのか悩んでいる。」

先生:3ヶ月で先輩と同じように仕事するのは難しいですね。今の仕事をやめるという結論は出しましたか?まだ迷っていますか?

Aさん:まだ迷っています。

先生:迷っているということは、まだ続けるべきという気持ちもあるんですね。なぜ続けたいと思っているのですか?

Aさん:やっぱり経済面ですね…。収入なしでは生活できませんし、お金を稼ぐだけなら別の仕事でも良いのかなと思っています。

先生:なるほど…。それでは、現在の仕事は自分に向いてないと思っているのでしょうか。

Aさん:誰かに相談したわけではないので、そういわれると自分の思い込みのようにも思えます。

先生:とても悩んでいるようですね。そういう時は原因探しをしてしまいます。あなたの場合には「自分は営業に向かない」と自分を悪者にしています。つまり、上手くいかない原因は、自分にあると考えがちなんですね。調子が悪い時、自分だったり相手だったり誰かを悪者にする傾向が人間にはあります。しかし、悪者に対して責めても仕方ないので、そういう時におすすめなのが「今自分にできること」という目的思考です。今自分ができることを考えた時に「やめるべきか」「続けるべきか」もう一度自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。

先生:わたしの感覚では、3ヶ月でやめるかどうかの判断はちょっと早いかな…。わたしは学生時代サッカー部でしたが、3ヶ月の頃はボールをまともに扱えませんでした。営業に向いているか向いていないかを判断するのは、あなた自身が決めても良いと思うけど、運動を例に考えてみても3ヶ月では早い気がしますね。

Aさん:しかしそうしたら、やめるかどうかの判断はいつ頃すればいいんですか?

先生:そうですね、たとえば1年後とかです。そのときにもまだ同じ考えだったら、そのときはやめればいいです。自分の人生を決めるのは自分ですからね。また、悪者探しをしているときというのは、的確な判断ができないものです。だから今は、決断を一旦保留にしてみてはどうでしょう。そこで、今自分にできることは何かと考えると、今までと違う考えも生まれてくるかもしれません。

Aさん:そうでしょうか…。

先生:まずは自分を責めないこと。またあなたが上司を責めないところも、とても素晴らしいと思います。自分ができないことを人のせいにする人もいますから。

Aさん:そういえば、一度先輩に相談したことがありました。ここでやめるような人は、どこに行ってもダメだと言われたことがありますが、やっぱりそうでしょうか。

先生:そうとは限りません。環境が変われば人は変わります。新しい環境に適応し、あなた自身が変わる可能性はあります。先輩の言っていることも間違いとは言い切れません。自分や周囲の人を悪者にして、やめるクセがついてしまうと、同じように悩んだ時にまたやめるという選択を取ってしまいます。その心理的なクセを断ち切ることが大切です。

Aさん:それでは、自分のクセを断ち切らないといけないんですね…。

先生:そうです。「今自分にできることは何か」を考えるだけなので、難しくはありません。あなたは今自分のクセをしっかりと意識したので大丈夫。意識ができれば、同じことは繰り返さないはずです。自分を責めるのをやめて、あなたが今できることを考えましょう。1年くらい経ってもまだやめたいと思っていたら、そうすればいいです。自分の人生なので、自分が望むように生きてください。

人間関係編:同僚に注意できない

「同じ課で働いている同僚が、さぼってばかりいる。他の人が残業していても定時で帰るし、そのせいでわたしたちの仕事の負担が大きくなっている。立場的に自分が注意すると、角が立つのではないかと思うとなんて言ったら良いのかわからず困っている。」

先生:注意するのはよくないと思っているのですね。それはあなたが上司ではないからですか?

Bさん:はい、そのとおりです。あくまでも同僚なので、言いづらいです。

先生:では、その人が仲間だとしたらどうでしょうか。仲間どうし、たとえば演劇サークルなどで、みんなで練習をしている状況を想像してみてください。その中の一人が、途中で帰ると言ったらどうしますか?

Bさん:「帰らないで」「もう少し待って」とかお願いすると思います。

先生:仕事でも同じではありませんか?同僚を仲間だと思い、注意ではなくお願いをすれば良いと思います。同僚を仲間とみるなら「もう少しやっていってくれると嬉しい」などと、お願いする言葉が出てくるかと思います。同僚が早く帰るのは本当にさぼっているからでしょうか。何か事情があるかもしれません。聞いてみたことはありますか?

Bさん:聞いたことはありません。確かに自分の思い込みもあるかもしれません。今度聞いてみようと思います。お願いしていく方法で、効果があれば良いですが…。

先生:あげあしを取ってしまうことになってしまいますが「効果」という言葉からは、仲間意識が感じられません。むしろ支配しようとしている感じがします。

Bさん:確かにそうですね!不用意に使ってしまいました。

先生:一緒に頑張ってほしいという気持ちを伝えるのですが、こちらの言うことに従ってほしいと伝えるのは少し違います。

Bさん:では、私が個人的に言うのと、グループを代表して上司が言うのとでは、どちらがよいですか?

先生:仲間意識があれば、どちらの立場でも同じです。言いやすい人が言えばいいと思いますし、全員同じ立場ならだれが言ってもかまいません。上司にも仲間意識があれば、上司でもよいと思います。上司であれば、みkんなの総意であることも伝わるのでよいかもしれません。相手に何か言う場合には、言うことを聞かせよう、支配しようと思わずに仲間として言いたいことを伝えて、お願いするようにしましょう。