第5章:超重要!在宅ワーク時のクライアントとのやり取り

第4章までで、実際に在宅ワークを始めていくための準備を整えました。第5章では、在宅ワークを行っていくうえで生じる案件発注者とのやり取りについて詳しく学習します。

在宅ワークをこなしていく中で悩みやすい点をピックアップしているので、学習を終えた後でも、困ったことがあればその都度確認しましょう。

在宅ワークで発生するやり取りの例

この章では、在宅ワーク中の発注者とのやり取りについて学びます。在宅ワーカーだからといって、人とのコミュニケーションが不要なわけではないのは、ここまでの学習でなんとなくわかっているのではないかと思います。

まずはどんな場面でやり取りが発生するのかを知っておきましょう。主な場面と内容を以下にまとめました。

案件遂行にあたって何のトラブルが起こらない場合でも、細かなやり取りは必ず発生します。適宜、社会人として適切な対応を心がけましょう。

社会人としてのやり取り

在宅ワーカーとはいっても、メッセージのやり取りで求められるのは「社会人として適切なやり取り」です。在宅ワークだからといって、特別に気をつけなければならないことはあまり多くありません。

企業に勤めているなど、社会人経験が豊富な方にとっては当然のことに感じられるかもしれませんが、この機会に改めて学習しましょう。覚えておくと便利なフレーズなども学ぶので、実際の活動にぜひ活用してください。

テキストでのやり取り

在宅ワーカーが発注者とやり取りする手段は、主にテキストでのやり取りか通話でのやり取りです。まずはテキストでのやり取りのポイントを押さえましょう。

まず確認するのは、良い印象を与えない例です。極端なものを作成しているので、良くない部分がわかりやすいかと思います。どこを修正するべきか考えながら読んでみてください。

画像の例で、確実に変更した方が良いところから確認しましょう。

以下の7点です。

※1

「うぃっす!」はビジネスメッセージの挨拶としては不適切です。くだけすぎ、距離が近すぎなどの問題点があります。
「お世話になっております。」などの一般的な表現にしておくのが良いでしょう。

※2

「わからない部分があった」だけでは、何がわからないのか、メッセージの受け取り手にどうしてほしいのか不明瞭です。
何について尋ねたいのかを明確にしてメッセージをつくりましょう。

※3

「どうすればいい?」と尋ねるよりも、いくつか選択肢を挙げて「このように対応してよろしいでしょうか?」などとできるのが理想です。どうしてもわからない場合は「ご教授いただけますと幸いです」などの言い回しを使うといいでしょう。

※4

ビジネスメールの場合、一通につき一件の内容にしておくことが推奨される場合があります。受け取り手が件名で内容を判断しやすくするためです。

軽い内容であれば一通にまとめても問題ないケースも多いですが、「納期に間に合わない」などの重大な内容であれば別で送る方が良いでしょう。

※5

何のことを示しているかが不明確です。案件名など、直接的な言葉を使ってわかりやすくしましょう。

※6

「納期に間に合わない」というのは大問題です。間に合いそうにない場合、まずは謝罪し、適切な言葉で発注者の判断を仰ぎましょう。

※7

文全体を通して、敬語が正しく使われていません。ビジネス上のやり取りは、誤解を招いたり不快感を与えたりしないように、敬語を使った方が無難です。

基本の構成を押さえよう

先ほどのNG例は、かなり極端な例でした。実際に在宅ワーカーとして働こうとしている方で、あのような文面を作る方はほとんどいないでしょう。

それでも、自分が書いたメッセージについて「これで本当にいいのだろうか」と不安を感じる方は多くいます。その不安を解消するために、ビジネスメッセージの基本構成を把握しておきましょう。

基本の構成は、メールかアプリなどでのメッセージかで少し異なりますが、重要なポイントはおおむね共通しています。

それぞれの項目について、どういった内容を記載するのかは以下の通りです。

件名

メールなど、件名機能がついているツールでのやり取りの場合は、積極的に使用しましょう。何についてのメールなのかが一目でわかるように書くのがポイントです。

件名では、言葉の丁寧さよりも簡潔さを重視しましょう。メールを開かなくても、ある程度内容を予測できる件名が理想です。

避けるべき例:

「お世話になっております。先日お話していた貴社ホームページのデザイン案についてメッセージ差し上げます」

(文頭に挨拶を入れてしまっているため、一目見たときに本題が何かわかりづらくなっています。また、長すぎてメールボックスでは本題が確認できない可能性が高いです。)

理想的な例:

「貴社HPのデザイン案につきまして」

宛先

ビジネスメールの本文では、冒頭に宛先を記載するのが一般的です。細かな部署まで書く必要はありませんが、どこの誰に向けての連絡なのかがわかるように書きましょう。

挨拶

「お世話になっております。」など、簡潔な文で構いません。やり取りの始めには、自分(差出人)について、「どんな仕事を受けている誰なのか」がわかるような一文を添えておくと、受け取った相手が内容を把握しやすくなります。

メッセージツールの場合は挨拶から書くケースが多いです。

要件・相手への要望

連絡の本題について、相手に伝わるように記載しましょう。「○○の件につきまして、」などの言葉から始めると、何についての話なのかがわかりやすくなります。

また、ビジネスでのやり取りの多くは、読み手(メールを受け取った人)に何かアクションを起こしてもらいたくて行われるものです。要件を告げた後、相手にどんなアクションを起こしてほしいのかを、依頼という形で記載しましょう。

報告の場合は「お知りおきください」などのフレーズが便利です。この先で便利フレーズについても学習しますので、状況に応じて取り入れてください。

定型文がある場合

発注者によっては、案件の提出時やその他の連絡時用に定型文を用意している場合があります。案件を大量に発注している企業などに多いです。

定型文が用意されている場合は、必ずそれを使用しましょう。定型文がここで学習したメッセージ作成の基本に則っていなくても構いません。

大量に案件を発注している発注者は、メッセージを管理しやすいように定型文を作っているケースが多いです。そうでなくても、定型文を設定しているということは発注者に何らかの意図があります。

丁寧な文を心がけるあまり設定された定型文を無視してしまうと、返って発注者の迷惑になるケースがあることを知っておきましょう。

通話でのやり取りのポイント

在宅ワーカーが、発注者と通話でやり取りする場合もあります。通話でのやり取りは、テキストでのやり取り以上に不安を覚える方が多いです。

言葉遣いに関して不安を感じている場合は、まずは「です・ます」を意識して話すことを徹底しましょう。在宅ワーカーが発注者と通話でやり取りするのは、案件の方向性を相談するミーティングなどが中心です。

打ち合わせでは、面接ほど言葉遣いが重要視されるわけではありません。(もちろん、相手を不快にさせないような最低限の敬語は必要です)

通話自体に苦手意識がある方は、通話に際して事前準備を行うことで負担を減らせます。事前準備として、何のための通話なのか、自分の伝えたいことは何か、相手への質問事項は何か、などを書き出しておきましょう。

事前に頭の中を整理できるので、緊張を軽減できます。また、そのメモを見ながら通話することで、伝え漏れや聞き忘れを防げるのもメリットです。

覚えておくと便利な表現

ビジネスシーンでのやり取りは、定型フレーズをベースに作成していくのが基本です。もちろん、すべてのメッセージをコピー&ペーストで作成するわけにはいきませんが、慣れないうちは便利なフレーズを組み合わせるイメージで作成するのも一つの手段です。

使う場面の多いフレーズを学習しましょう。

「挨拶」部分で使える表現

どんな取引先との連絡でも、「挨拶」は重要です。ビジネスシーンでは、簡潔かつ不快感を与えない挨拶文を心がけましょう。基本的には、定型的な表現をいくつか知っておいて、状況によって使い分けるのがおすすめです。

「お世話になっております。○○の△△です。この度は~~~の件でご連絡いたしました。」

○○には自分の仕事内容や立場を、△△には自分の名前を入れましょう。~~~部で、要件について簡潔にまとめておくと、次の文につなげやすくなります。

また、「お世話になっております。」は、すでにビジネスで何らかの関わりがある相手に使うのが一般的です。

「はじめまして。」「突然のご連絡失礼いたします。」

初めてやり取りをする相手に使える表現としては、「はじめまして。」「突然のご連絡失礼いたします。」などがあります。

「要件・相手への要望」で使える表現

「要件」は、そのメッセージのメインといえる部分です。ビジネスシーンの「要件」は「相手への要望」とセットになっていることが多いので、そちらと合わせて文を作りましょう。

「○○につきまして、~~~ということがありました。」

相手に状況を説明するフレーズです。本題についての情報をわかりやすく伝える手段として知っておきましょう。

「○○につきまして、△△という状態ですが、◆◆という対応でよろしいでしょうか?」
「○○につきまして、△△という状態ですが、いかがいたしましょうか?」

案件遂行時に、どうするべきか悩ましい事項があった場合に判断を仰ぐフレーズです。なぜ悩んでいるのかを添えるとより良いでしょう。

デザインなどの場合は考えている選択肢をいくつか提示すると、読み手が判断しやすくなります。ただし、選択肢を提示する場合は「別の対応が必要な場合はお申し付けください。」などを付け足し、相手が自分が挙げた選択肢以外を望む場合に対してもフォローしておきましょう。

「お忙しいところ恐れ入りますが、」

相手への要望の前に、クッション言葉として挿入できるフレーズです。相手の時間をいただくことへの感謝や謝罪の意を表せます。

クッション言葉は、ビジネスマナーの一環として重要です。お互いが気持ちよくやり取りできるよう、必要な場面でしっかり取り入れるようにしましょう。

「ご承知おきください。」「ご承知おきいただけますと幸いです。」

相手への単純な報告・連絡で使えるフレーズです。「一応相手に連絡しておきたいけれど、特にアクションを要求するメッセージではない」という場合に適します。

お詫びの表現

テキストでのやり取りの中でも、特に作成に困る方が多いのが、「お詫び」に関するメッセージです。お詫びをする状況が起こらないのが一番ではあるものの、トラブルが起こってしまった場合などは早急に対応する必要があります。

その際に使える表現を確認しておきましょう。

「~~~し、申し訳ございません。」

お詫びの際は、何について詫びているのか明記しましょう。

「~~~することで再発防止に努めます。」

継続的な取引がある相手には、今後どのように誠意を見せていくかを伝えると良いでしょう。

社会人としてのメールマナー

社会人としてビジネスメールやメッセージでのやり取りを行う際、必ず意識しておきたいのは下記の3点です。

  • 読み手に伝わるよう意識した文面にすること
  • 迅速な対応を心がけること
  • 読み手に不快感を与える表現は避けること

メッセージを送るタイミングについては、「送る必要が生じてからなるべく早い方が良い」と心得ましょう。

そもそもメッセージのやり取りは、「読み手が都合のつくタイミングで目を通せる」という特徴があります。そのため、夜間だからといって送信時間をずらす必要は一般的にはありません。(もちろん、夜間は返信がない可能性が高いです)

よく使われているツール

在宅ワーカーと発注者のやり取りでは、主にビジネス向けの連絡ツールが用いられます。

ビジネス向けの有名連絡ツールはいくつかあり、その中から発注者が使用しているものを指定される場合が多いです。指定されたツールに登録し、アプリをダウンロードするなどして使いましょう。

どれも直感的に操作できるので、難しく考える必要はありません。ただし、使用料がかかるものもあるため、「試しに一件だけ仕事を受けてみよう」というときは気をつけてください。

実際に使用されることの多いツールは以下のようなものです。

Slack(スラック)

世界的に有名なビジネスチャットツールです。中〜大規模のプロジェクトや組織で用いられています。

組織全体でのチャットルームのほか、プロジェクトチームごとや各種グループごとに「チャンネル」と呼ばれるものを設定できます。

ユーザーごとにどの「チャンネル」を閲覧できるかを設定し、自分と関係のあるグループで簡単にチャットができるのが魅力です。上司や責任者が、プロジェクト全体の状況を把握しやすいというメリットもあります。

もちろん、個人間のダイレクトメッセージのやり取りも可能です。

Chatwork(チャットワーク)

日本で作られたビジネス向けチャットツールです。国内を中心とした小〜大規模のさまざまなプロジェクトで用いられています。

フリープランが用意されていて、チャットグループへの累計加入数が一定数に達するまでは無料で使用できます。初心者でもとっつきやすいツールだといえるでしょう。

LINE WORKS(ラインワークス)

プライベートで使用されることの多いメッセージツール・LINEのビジネス版です。

LINEと同じような感覚で使える一方、ビジネスシーンで需要の多いデータ共有やスケジュール共有が簡単に行えます。普段LINEを使っている方にとってはかなり使い勝手の良いツールだといえるでしょう。

どちらかといえば個人やベンチャー企業で多く使われているツールです。

Skype(スカイプ)

主に通話や緊急性の高いチャット用ツールとして使用されています。

ビデオ通話での打ち合わせなどが生じる場合に用いられることが多いです。普段の連絡はテキストチャットメインの他のツールを使用し、打ち合わせだけSkypeというケースもあります。

個人の場合は基本無料で使用できるので、必要に応じてアプリを取得しましょう。

確認問題

第5章で学んだことを確認してみましょう。