第4章:在宅ワークの始め方・続け方

いよいよこの章では、「在宅ワークを始めたい」と思ったときに具体的にどのように行動すればいいのかについて学びます。

また、在宅ワークを続けていくために何をすればいいかについても学ぶので、一度すべて目を通して、先を見据えた行動をするために役立てましょう。

「在宅ワークをしたい!」と思ったときにまずすべきこと

上の図は、「在宅ワークをしたい」と思ったときにすべきことを簡易チャート図にまとめたものです。

図で流れを確認したら、ページを読み進めてそれぞれについて詳しく学びましょう。

自分にできることを見極めよう

在宅ワークを始めるとき、まずは自分にできることは何かを確認するところから始めましょう。

在宅ワークは業務委託という形態での発注が多いことはすでに学習しました。この業務委託という形態の強みのひとつとして、「その業務を得意とする人に任せられる」という点があります。

つまり、発注者は「自分よりももっとその業務を得意とする人にその業務を任せること」でクオリティを確保し、受注者は「自分の得意な業務に専念すること」で報酬を得る仕組みです。

逆にいえば、在宅ワークで自分の苦手な案件を受注すると誰も得をしません。できるだけ避けた方がいいでしょう。

また、ここでいう「苦手」とは、上手かどうかというよりは「それに取り組むことが苦になるかどうか」で考えるのがおすすめです。

まずは下記の図を参考に、自分ができそうな案件はどれかを考えてみましょう。

とはいっても、経験のない業務については得意か苦手かの判断が難しい場合があります。その場合は、一度お試しのつもりで取り組んでみるのも良いでしょう。

在宅ワークのための機材を用意しよう

在宅ワークを本格的に始めるのであれば、パソコンを用意しましょう。

在宅ワークではパソコンを必要とする案件が多いためです。スマートフォンのみでできる仕事はそもそも少ないうえ、小さな画面では作業効率が上がりません。

快適に動作するのであれば、ノートPCでもデスクトップPCでも構いません。ただし、動画編集などの負荷が大きい作業の場合は、デスクトップPCがあった方が良い場面があります

案件獲得のためのツールを用意しよう

在宅ワークでどんな案件を受注したいか方向性が決まったら、案件獲得のためのツールを用意しましょう。

案件を獲得する流れは、「発注者側が案件を発注していて受注者側(在宅ワーカー)がそれに応募するパターン」「発注者側が在宅ワーカーに仕事の相談をするパターン」の2つに大別できます。

業務の種類にもよりますが、初心者の場合はまず発注されている案件に応募するための環境を整えましょう。そのために便利なのが「クラウドソーシングサービス」です。

仕事を探すなら「クラウドソーシングサービス」

在宅ワークで案件を受注するためには、自分から仕事を探すことが重要です。かといって、WebデザインやWebライティングなどの業務で企業に直接連絡するのは得策とは言えません

では、どうするか。クラウドソーシングサービスを利用しましょう。

クラウドソーシングサービスとは、業務委託を考える方が仕事を発注するためのサービスで、「発注者と受注者の仲介をしている」と考えるのがわかりやすいです。

有名なクラウドソーシングサービスがいくつかあるので、まずはその中から一つ選んで登録してみるのが良いでしょう。下記はその一例です。

クラウドワークス・ランサーズ

どちらも大手といっていいクラウドソーシングサービスです。Webライティング業務やWebデザイン、ロゴ制作など、さまざまな案件が掲載されています。ライティング以外の業務も受注したい方、Webデザイン業務などをメインにしたい方におすすめです。継続案件も多くあります

ライティングに特化しているわけではありませんが、該当案件数が少ないわけではありません。迷ったときはこのどちらかに登録してみるといいでしょう。どちらかといえばクラウドワークスの方が初心者向きです。

サグーワークス

初心者でも気軽に挑戦しやすい、ライティング特化のクラウドソーシングサービスです。主にライティング系業務や文字入力系業務を受注できます。受注から納品までの期間が短いものが多いのが難点です。「単発で良いからいますぐできる仕事が欲しい!」という場合に適します。

ワーカー側が仕事を募集できるサービス

ここまでに紹介した「クラウドソーシングサービス」は、仕事を発注したい方向けのサービスです。在宅ワーカーは、そこで募集されている案件に応募し、発注者の希望と合えば案件を受注できます。

反対に、ワーカー側が仕事を募集することができるサービスも存在します。「スキルシェアサービス」と呼ばれるものです。ワーカーを選ぶという性質上、自分の強みが明確な状態でなければ案件受注につながりにくいですが、登録して損をするケースはあまりありません。興味があれば検討してみるといいでしょう。

クラウドソーシングサービスを使うメリットと注意点

クラウドソーシングサービスを使うメリットは、実は、案件を獲得しやすい点だけではありません。「在宅ワーカーにつきまとうトラブルのリスクを軽減できる」という大きな魅力があります。

「納品したにもかかわらず報酬が振り込まれない」などのトラブルは、残念ながら起こりえるものです。クラウドソーシングサービスを利用せずに案件を受注した場合、特にそのリスクが高まってしまいます。

しかし、クラウドソーシングサービスの多くは金銭トラブルを防止するための制度が充実しています。例えば、「クラウドワークス」では、ワーカーが案件に着手する前に発注者が仮払いを行うことになっています。こうした制度は、ワーカー側にとっても発注者側にとっても安心感があります。

ただし、クラウドソーシングサービスの利用にもいくつか注意点があります。

ひとつは、当然のことではありますが、クラウドソーシングサービスを利用する際には利用料がかかるという点です。そのため、発注者が支払う報酬に比べて、実際に受け取れる報酬は低くなります。ただし、サービス利用料を経費として申請することが可能です。忘れずに申請するようにしましょう。

また、トラブルが全く起こらないわけではないというのも注意点です。「クラウドソーシングサービスを利用しているから安心」と油断せずに、契約内容や取引先についてしっかり確認して案件を受注するようにしましょう。

情報発信なら「SNS」

企業や個人から直接仕事の依頼を受けて働きたいと考えている方もいるでしょう。

その場合、まずは自分の存在を周囲に知ってもらう必要があります。誰にも知られていない状態では、仕事は舞い込んできません。

何が得意なのか、どんな仕事を募集しているのか、これまでの実績はどんなものなのか、情報を発信して、発注者に見つけてもらう必要があります。

情報発信のために役立つのが「SNS」です。

TwitterやInstagramを活用しよう

情報社会となった現代において、SNSはマーケティング的にも無視できない存在です。実際にイラスト発注などをはじめとした在宅ワークの現場では、TwitterやInstagramで情報を収集する方が多くいます。

例として、イラストの仕事を発注しようとしている発注者の視点から、SNSで情報を探す利点を考えてみましょう。イラストを発注する場合、発注者はそのイラストを使って顧客に何らかのアプローチをするのが目的です。その顧客の多くが、SNSを利用しているのであれば、そのSNSで人気があるイラストレーターに依頼すれば、顧客からの注目度は高まるでしょう。

こうした例からわかるように、SNSで周囲からの人気を得ることで、仕事が舞い込みやすくなる傾向があります。

多くのSNSは無料で登録できるので、余裕があるときに登録してみるといいでしょう。

SNS活用のコツと注意点

SNSを効果的に利用するにはいくつかコツがあります。まずは3つのポイントを意識してみましょう。

1つは、継続的に運用することです。SNSは、一度や二度の投稿では効果がありません。毎日コツコツと投稿を続けていけば、少しずつ人目に触れる可能性が高くなっていきます。

2つめは、SNS上の交流を大切にすることです。SNS上でさまざまなアカウントと交流することによって、自分の投稿が拡散されやすくなったり、企業との繋がりができやすくなったりするのがメリットです。

また、仕事関連で他者との交流が乏しい在宅ワーカーにとって、SNSで仲間を作っておくと気分転換にもなります。

3つめのポイントは、専門性を高めることです。SNSには同業者アカウントもたくさんあります。その中から自分が選ばれるためには、同業者との差をアピールするのが有効です。

例えば「Webデザイン」の仕事を受注したいなら、「Webデザインの中でもどんなジャンルが得意なのか」までプロフィールに明記しておきましょう。関連業者の目に留まりやすくなります。

ただし、SNSの活用にはリスクもあります。情報の取り扱い方を誤るとトラブルのもとになるほか、投稿内容によっては信用を損ねたり、依頼する候補から外されてしまったりする事態が考えられます。投稿内容には責任を持ち、常識と良識に基づいた活用を心がけましょう。

経験者なら企業の募集ページからアプローチ

あなたがこれからやろうと考えている在宅ワークについて、すでに仕事として経験がある場合は企業などの募集ページから直接アプローチすることもできます。

その場合は、自分がやりたいと考えている仕事の求人サイトなどもチェックしてみましょう。ただし、初心者にはハードルが高いです。

在宅ワーカーに関する諸手続き

在宅ワーカーとして働くにあたって、必要な準備や手続きなどを理解しておく必要があります。

手続き・申請とはいっても、それほど難しいものではありません。

必要な手続きは以下のようなものです。どのタイミングで何を申請しなければならないかを押さえましょう。

始める際にやるべきこと

在宅での副業を始めるために、公的な手続きは必要ありません。案件を獲得することさえできればすぐに仕事を始めることができます。

ただし、本業として企業等に所属している方は、就業規則を確認しておかなければなりません

就業規則は入社時などに企業から共有されるのが一般的です。労働基準法第106条にて、以下のように定められています。

「使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。」

労働基準法第106条

そのため、会社のすぐに確認できる場所、企業PCの共有フォルダなどにあるはずなので確認してみましょう。見つからない場合は、上司や労務関連の部署に「就業規則を見せてほしい」と尋ねてみるのがおすすめです。

また、在宅ワークとして仕事に着手する際には、契約内容を確認するようにしましょう。最低限、業務内容・納期・報酬額の3点を明確にしておく必要があります。トラブルを防止するため、徹底して確認しましょう。

さらに、副業として在宅ワークを行う場合は、副業先での年末調整は不要です。在籍している企業で年末調整を行うはずですので、そちらと重複しないように、副業先には事前に伝えておきましょう。副業歓迎の案件の場合は、初めから年末調整を行わないものも多いです。

契約内容の確認についてはとても重要なポイントなので、第12章でも詳しく学びます。そちらもあわせて確認しましょう。

軌道に乗ってきたらやるべきこと

在宅ワークが軌道に乗り始めて、一定の報酬が見込めるようになってきたら、公的な手続きが必要になるケースがあります。

まず、副業として年間20万円以上の収入を得た場合は確定申告を行いましょう。

確定申告については第7章で詳しく学びます。「知らないうちに脱税してしまっていた」という事態を防ぐために、自分で収入と税について管理できるようになりましょう。

在宅ワークでの収入が増えて、副業ではなくフリーランスとして働く場合には、税務署に「開業届」を提出して事業者登録を行う場合があります。個人事業主となることで、市場での信頼度が上がったり、確定申告でいわゆる「青色申告」を行えたりというメリットが得られます。

ただし、開業届を出せるのは「繰り返して」「継続して」「独立して」事業を行っている方です。企業に所属している場合は行えませんので注意しましょう。

確認問題

第4章で学んだことを確認してみましょう。