第3章:カウンセラーの仕事の実態

自分のなりたい心理職を見つけよう!

一言で心理職と言っても、細かく見ていくと様々な職業があります。
ここからは、本講座で学んでいる皆さんが実際の現場で働くことを想定した場合に、どのような分野があり、どのような心理職があるのかを紹介していきます。

心理職の分野は「医療」「教育」「司法」「福祉・公衆衛生」「産業」「研究(大学)」の6つの分野に分かれています。

上記6つのそれぞれの分野について詳しく紹介していくので、実際の現場で心理カウンセラーがどのように活動しているのかを把握していきましょう。

また、それぞれの分野に関連する資格や条件も紹介していきます。
自分がどの分野で働いていきたいのかを明確にして、これからの心理カウンセラーとしての人生を考えていきましょう。

※また、これから紹介していく関連資格は、必ず取得しなければいけないものではありません。参考程度として頭に入れておきましょう。

①医療分野

関連資格

臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、認定心理士、認定カウンセラー、精神対話士など。

患者・病院の接点に立つ

心理系を扱っている医療機関は総合病院の「精神科・精神神経科・心療内科・神経科・精神科病院・メンタルクリニック」などがあります。

また、小児科や精神保健福祉センター関係の仕事も増えてきています。
医師や看護師、専門技師は必ず勤務していますが、心理関係はそれぞれの機関の医療方針によって異なります。

仕事内容や職域、待遇も採用側や担当の医師が心理職をどのようにとらえているかで、大きく差があります。

ただし「日本精神神経科診療所協会」に加盟している約1700名の臨床心理士やそのほかのカウンセラーはクリニック・診療所で常勤で働いていることが多いです。

対象年齢の広さ

医療分野での大きな特徴は、子どもから高齢者まで全ての年齢が対象となっており、病状も様々です。
医療的な基本知識や専門的なカウンセリング技術・知識が必要です。

とくに小児科での心理的アプローチは重要です。
必要に応じて子どもには遊戯療法などを、保護者にはカウンセリングを行っていきます。

近年では子どものうつ病が問題になっています。
うつ病は成人の病気という認識の陰で見落とされがちですが、放置してしまうと重症化したり、大人になってから再発する可能性があります。

抗うつ剤が必要になる場合も多いですが、まずは適切なカウンセリングを行っていくことが重要です。

②教育分野

関連資格

公認心理師、臨床心理士、学校心理士、教育カウンセラー、スクールカウンセラー、認定カウンセラー、交流分析士、家族相談士、キャリアカウンセラー、公務員試験採用など。

スクールカウンセラー

スクールカウンセラーは主に、小・中・高の学校教育現場で児童・生徒や保護者にカウンセリングをしたり、コンサルを通して先生のサポートをしたりします。

文部科学省は、臨床心理士の資格を持つことを条件にあげていますが、地域によっては学校心理士の資格でも問題のない所もあります。

また、資格が無くても大学院で心理学を専攻して、臨床経験が2年以上、学歴と経験が条件のところもあります。

スクールカウンセラーとは別に、学校内に設けられている相談室で児童・生徒を対象に相談を行っている相談員もいます。
この相談員は各自治体から派遣されており、特別必要な資格や条件はありません。

各自治体の広報に募集要項が掲載されているので、普段から注意してみておく必要があるでしょう。

求められる姿勢

まずは児童や生徒のことをよく理解しようとする姿勢が大切です。
そして、カウンセラー自らが学校に働きかける行動力も求められます。

せっかくのシステムであっても、カウンセラーや相談員が相談室内でじっと待っているだけでは意味がありません。
学校での相談内容で多いのは「学業相談・進路相談・適応相談」です。

とくに適応相談では軽度なものから重度なものまであり、内容によっては学校内だけではなく「保護者・児童相談所・病院・家庭裁判所」などの外部機関との連携も必要になります。

学校内だけではなく、学校を取り巻いている環境も見すえてサポートをする姿勢が求められるということです。

教育委員会に付設した教育相談所

公立の教育相談所や教育センターでは、児童や生徒本人と保護者を対象に、子どもに関する様々な相談を受けます。
そこでは、心理の専門家や教育現場経験者などが働いており、公務員試験による採用が一般的となっています。

③司法分野

関連資格

公務員試験採用、公認心理師、臨床心理士、応用心理士、認定心理士、認定カウンセラーなど。(心理系大学の卒業が条件の場合もある)

更生

犯罪者や非行少年に「面接・観察・保護・検査」を行い、それらのサポートを通じて社会復帰を目指すことを目的とした職務です。

一般社会で問題とされている彼らの行動の背景にある「心理・家族・環境」を見極めて、どうしたら更生につなげていけるかを考えていきます。

特に未成年者の犯罪に対して、カウンセリング技術だけではなく、犯罪心理学の知識も重要となってきます。

様々な職場・職種

家庭裁判所の「家庭裁判所調査官」少年鑑別所、少年院、刑務所の「法務技官」保護観察所の「保護観察官」科学捜査研究所など警察関連機関の「研究員」や「少年補導員」などが主な職種です。

それぞれの職種が違っていても、カウンセリングの技術や知識が必要不可欠であることには変わりはありません。

④福祉・公衆衛生分野

関連資格

公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、認定心理士、社会福祉士、精神対話士など。

長期間の関わりに

分類される施設は児童相談所、児童養護施設、精神保健福祉センター、老人福祉施設、リハビリテーションセンター、知的障害者援護施設、女性相談センターなどがあります。

福祉関係の仕事は「心理判定」「カウンセリング」「訓練指導」の3つです。

訓練指導では理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、ソーシャルワーカーと連携して「治療・教育・保育・生活指導」を行っていきます。

児童が対象の場合には、学業も含めて「養育・治療・教育」を合わせて行っていくことが求められます。
ちなみに、児童相談所は行政機関で児童養護施設を管轄しています。

女性相談センター

女性相談センターでは、諸事情で生活の場を失ってしまった女性、DV(ドメスティック・バイオレンス)で心身に傷を負ってしまった女性たちが、緊急に非難する施設です。

電話や来所での相談にも応じており、それぞれの女性の生き方に関わりながら、将来の生活について一緒に考えて支援をしていきます。

⑤産業分野

関連資格

産業カウンセラー、臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント、交流分析しなど。

労働者の心の問題を助ける

企業などで働いている人の心身の健康作りをサポートする役割を担っています。
職場に保健室や医務室がある場合には、そこにカウンセリング施設が併設されていたり、企業に付属する診療所などが担当したりなどがあります。

最近は、社外のカウンセリング会社と提携・委託をして、相談を受けられるようにしている方式が多く見られるようになっています。

仕事以外の相談が増加

最近では社会の変化がめざましく、どの職業においても常にその業界での最新の知識が求められるようになっています。
社会の変化についていけずに、心身ともにまいってしまう人も増え続けています。

このような状況で、誰かひとりがダウンしてしまうと、その職場全体に大きく影響してしまいます。

職場の生産性が落ちてしまえば、組織全体にも影響を及ぼすので、心の病の予防や早期発見が必要となります。

最近の相談内容は、自分のことだけではなく子どもの教育や老親の介護などがあり、産業カウンセラーには産業分野に限らず、より広い守備範囲が求められるようになりました。

⑥研究(大学)分野

関連資格

公認心理師、臨床心理士、学生相談室カウンセラー、大学の教員、研究員など。

大学での心理職とは?

大学での心理職は大きくわけて2つあります。
1つは、大学で教員として学生に臨床心理学の講義をする場合や、臨床心理学の研究をするようなケースです。

もう1つは、学生相談室や保健管理センターといった、大学内の相談機関のカウンセラーとして勤務するケースです。

どちらかの立場で勤務する場合もありますが、臨床心理士の資格を持っている教員の場合には、学生相談室のカウンセラーも兼務していることが多いです。
逆に、学生相談室のカウンセラーが、普段は相談業務をしていて、週に何コマか大学の講義をするようなケースもあります。

大学によっては、学生相談室のほかにも、地域住民に開放した相談機関を設置していることもあります。
この相談機関は、大学院で臨床心理士を養成するコースのある大学に設置されていることが多く、カウンセラーを目指している大学院生が実習授業として、指導者付きのカウンセリングをすることもあります。

学生相談室

学生相談室は、主に学生が利用している大学内の相談機関ですが、学生のことについての相談の場合には、保護者や職員も利用することができます。

全国的に見ても、相談内容は「修学・性格・対人関係」に関するものが多い傾向です。
その中でも修学関係では、単純な単位取得問題のほかに、転部や転科、再受験に関することがあります。

就職活動を目前にしている学生などは、それに関するストレスで相談室に訪れることも多いでしょう。
こちらは、新型コロナウイルスの影響でより増加傾向あります。

確認問題

第3章で学んだことを確認してみましょう。