第3章:交流分析:TA


TA(Transactional Analysis)とは、交流分析のことです。

人とのコミュニケーションにおいて、自分がどのような「行動・思考・感情」に支配されているのかを、5つの「心の状態」に分類して分析していきます。

人の心には、5つのすべての「心の状態」が存在しており、様々な状況の時にいずれかの心の状態が強く表れます。
自分や他人にも、個性と言えるその違いがあると知ることはとても重要なことです。

自分の心の状態の表れ方を認識して受け入れることで、自分の行動と相手との接し方、グループ・組織の中での意識が変わっていきます。

5つの心の状態

①CP:Controlling Parent

子供を自分の思うようにコントロールしようという、親のような心が働き、言動を起こします。
これは「頭ごなしに注意する」「正義感が強い」「礼節を重んじる」という特徴があり、道徳的または威圧的な厳しい態度をとります。

②NP:Nurturing Parent

愛情深く子供に接する親のような心が働き、言動を起こします。
相手の弱い部分を優しいまなざしで見つめ、労りの心で接するという特徴があります。
教育的かつ受動的、時には過保護にもなります。
共感・思いやりの心を持つことが大切です。

③A:Adult

成人としての要素で、合理的・知性などによって物事を処理していきます。
話の筋道が通っている考え方をして、感情よりも知性で物事を捉える特徴があります。

④FC:Free Child

自由な感情表現をする子供のような心が働き、言動を起こします。
自由奔放なところや、感情豊かな面を持つことが特徴です。
天真爛漫または、衝動的、自由な感情表現と豊かな個性を持ちます。

⑤AC:Adapted Child

周囲に良い子に見られるようにするという心が働き、言動を起こします。
環境に順応しようとする意識が高く、周囲へ細かく目を配り、自分自身の感情を抑えてしまうこともあることが特徴です。
要求・感情の抑制をして、規範や期待に順応します。

心の状態を高める

心理学理論の中の1つである、TAを学ぶことで自分の考え方や行動、気持ちの動きを「心の状態」として客観的に認識して、相手との接し方、状況に応じた適切な言動を選べるようになります。

今の心の状態は刻々と変化していきます。
どの面がよく表れるのか、また現れにくいのかは人によって違いがあります。
そうした1人ひとりの傾向を客観的に分析するのが「エゴグラム」です。

エゴグラムを作成することによって、自分がのどのようなことが気になるのか。
また、他人とどのような関わり方をする傾向があるのかを客観的に理解し、その傾向をふまえた上で、人と関わっていくことができるようになります。
自分が高めたい心の状態について、下記の基本行動を参考に実行してみましょう。
相手に使用する「言葉・仕草・態度・行動」を工夫することによって、長期的に自分の傾向を変えていくことができます。

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TA ストローク

ストロークとは、その人の存在を認めていることを示す「働きかけ」を意味しています。
ストロークには、いくつかの分類法があります。
以下の視点から分類し、それぞれの働きを確認していきます。

  • 肯定的ストローク:受け取った人が心地よいと感じるもの
  • 否定的ストローク:受け取った人が不快に感じるもの
  • 条件付きのストローク:相手の行為・功績などの、特定の理由に対して与えられるもの
  • 無条件のストローク:その人の存在・人格そのものに対して与えられるもの

上記を複合し、表に整理すると以下のようになります。

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人は、肯定的ストロークを多く受けることによって「自分の存在を認められる」という基本的な欲求が満たされると、変化・成長をしていきます。
また、仮に否定的なストロークであったとしても、ストロークがない(無視される)よりも、ストロークがあることを人は求めています。

そして、否定的ストロークは、人の成長において方向を修正する働きをもっています。
たとえば「叱る」という行為は、否定的なストロークにあたりますが、条件付きの否定的ストロークにすることで、具体的な注意・アドバイスとして肯定的な意図を伝えることができます。

これに対する「無条件の否定的ストローク」は、相手そのものを否定するメッセージとなってしまい、相手を傷つけてしまうので避けるようにしましょう。

TA ディスカウント

ディスカウントとは、自分・他者に置かれた状況そのものなどを過小評価(軽視)したり無視したりする心の働きです。

ホスピタリティ実践のためには、自分・他者を「ディスカウントしない」という姿勢が最も重要となっています。
コミュニケーションをしていく中で、相手を軽視しているということが伝わってしまった場合、良好な人間関係を築くことはできません。

これは、意識していなかったとしても、相手を軽視した言動をとるという事は、ディスカウントしていることになってしまうので注意が必要です。

それでは、具体的にどのような言葉がディスカウントになるのでしょうか。
軽んじる・見下す・けなす・無視する」といった姿勢です。

上記のような心の働きを日常的にしていると、対人関係を損ないがちとなってしまいます。
また、このような心の働きは、自分自身の未来を狭めてしまうことにつながるので、注意が必要です。

確認問題

第3章で学んだことを確認してみましょう。