第4章:人間関係が発達

学校

小学校入学でどう変わる?

子どもが小学校に入学すると、家庭で過ごす時間が少なくなります。

初めは心細く思うかもしれませんが、次第に子どもは親や家庭からの解放感を味わうようになります。そして自分だけの秘密を持ったり、内面的な発達を進めていきます。

学校生活の中では、子どもが自分で対応しなければいけない課題も出てきます。学校の習慣や規則に従うこともその1つです。しかし、子どもは遊びに夢中になって規則を破ってしまいがちです。

そのために子ども同士が対立したり、気まずい雰囲気になる場合もあります。親や先生は元気があるゆえの結果だと諭すとともに、夢中になって遊べる環境を整えてあげることが大切です。

さらに先生や友達と良い関係をつくっていくには、学校側はもちろん、家庭での支援も必要です。子どもの話をよく聞いて、子どもが前向きになれるように働きかけていくことが重要です。

先生との出会いは影響が大きい

子どもにとって、先生はクラスで唯一の大人であって、絶対的な存在です。先生の与える影響はとても大きいです。後年、自分の人生を振り返り、ある先生との出会いが「人生感を変えるきっかけになった」という人も少なくありません。

子どもは先生との交流を通して、身勝手な自分自身の姿勢を見直すきっかけになったり、自分の将来について考えるようになったりします。

誰にも強要されることなく自発的に先生の姿を「道しるべ」として、自分の姿を見つめ直します。こうして子どもたちは自ら新しい自己をつくりあげていきます。

知能

IQでわかるのは「認知発達」の度合い

一般的に知能というと「頭のよし悪し」と思う人も多いです。

学問的には様々なとらえ方があります。発達心理学では、知的活動に必要な力だと考えられています。この知能を測るものさしの1つとして有名なのが「IQ(知能指数)」です。

IQは知能テストによって得られた精神年齢をを生活年齢で割って100を掛けて算出します。

知能テストは年齢に応じて「思考・言語・数量・知覚」などの問題で構成されています。

これらの問題をどの程度達成できているかで、知能の発達程度を調べていくものです。学校のほかに、精神科などで必要に応じて実施されています。

IQは変化していく

子どもの頃のIQは大人になっても変わらないのでしょうか?

6歳と18歳のときのIQを調べた研究では、数値は一定ではなかったといいます。これは、知能が年齢とともに発達するものではないからです。

変化には個人差があります。一般的に「IQが高いと頭がよい」と言われていますが、そうとも限りません。知能テストで人間の能力の全てが測れるわけではありませんし、頭のよさは判断基準や状況によっても異なります。

いわゆる「天才」と呼ばれているような人でも、必ずしもIQは高くありません。たとえば、地動説で知られる科学者コペルニクスのIQは0~17歳で105、18~26歳で130と推定されています。

さらに、IQ140以上の人を対象とした研究では、偉大な功績を残した人はいなかったというものもあります。

記憶

記憶量は大人と変わらない

小学校の掛け算の「九九」が覚えられずに、苦労した人もいるのではないでしょうか?

そもそも、記憶とはどのような仕組みなのだろうか。まず情報を取り込み、頭の中に入れておきます。そして必要な時に思い出すという3つの段階に分けられます。

  • 記銘:情報の取り込み
  • 保持:頭に入れておく
  • 想起:必要時に思い出す

記憶は保持する期間で「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」に分けられます。

感覚記憶と短期記憶の容量は、5歳までにほぼ大人と同じになります。また、記憶する対象の知識量によっては、大人異常の記憶力を発揮することもあります。

10歳前後で工夫して記憶することができる

記憶の容量は大人と変わらないのに、5歳くらいの子どもに電話番号を聞いても「わからない」と答えることがあります。これは、子どもは覚えたことを必要なときに思い出すのが苦手だからです。

必要なときに必要な情報を思い出すには、効果的な覚え方をしなければいけません。そのテクニックを「記憶方略」といいます。記憶方略にはリハーサル体制化があります。

幼児は記憶方略を自発的に用いることはありません。自分で工夫して用いるようになるのは、児童期に入ってからです。また、記憶力に関わる能力として、メタ記憶があります。自分の記憶力に対する自覚と、それに基づいて記憶方法を調整する能力のことです。

たとえば「人の名前を覚えるのが苦手」という自分の記憶に関する知識に基づいて「人の名前はカードに書いて覚える」と記憶方法を工夫するようになります。

このようなメタ記憶の発達には、ある程度の知的成熟が必要なので、確立されるのは10歳以降といわれています。

つまづき

自他比較

劣等感を抱くことは、多かれ少なかれ誰にでもあります。「自分は他人に比べて劣っている」という劣等感は「自分は価値ある存在だ」という自尊感情の裏返しとも考えられます。

一般的に、幼児期では自尊感情が高く、自分を肯定的にとらえることができます。しかし、小学校に入学して傾倒的な学習が始まってくると、否が応でも他の子どもと比較されることになります。子ども自身も友達の状況が気になります。

自分だけ授業内容がわからない、テストの結果が友達より悪いと、自信を無くしてしまいます。そのような中で、劣等感が生まれてきます。

劣等感がマイナスにならないために

子どもが劣等感を抱くようになったというのは、自分自身を客観的に見れるようになったということです。その反面、やる気を失ってしまったり、落ち込んでしまったりと、マイナスに作用する恐れもあります。こうしたマイナスの作用を防ぐには、周囲のサポートが重要です。

まず1つは、親や教師がその子どもの良い所をできるだけ多く見つけてあげること。「友達に劣るところもあるけど、自分が優れているところもある」と思えたら、自分を全否定しなくてもすみます。また、他の人と比べ過ぎないことです。家庭でも兄弟でも比較するのは、子どもの劣等感を強めてしまう原因になります。

そしてもう1つは、能力の考え方です。劣等感にとらわれていると「自分は何をしてもダメ」という考えから抜け出せません。できる限りの努力をして、工夫をしていくことで能力は伸びていくという考え方をする必要があります。

さらに子ども自信が「できた!」と思えるような体験をさせることも大切。他者からほめられたり認められたりすることは、自分に対して大きな自信につながっていきます。

しかし、いきなり大きな目標を設定してしまうと、失敗したときにやる気を失ってしまいます。目標を段階ごとに設定して、取り組んでいきましょう。小さな目標を達成するたびに、満足感が得られて意欲が長続きします。

確認問題

第4章で学んだことを確認してみましょう。