日本におけるキャリアカウンセリングの始まりは、大正時代の「職業指導」という言葉から始まったと言われています。
始まりは、アメリカのパーソンズという人物が日本へ「職業指導」という活動を紹介したことでした。
職業指導とは「職業を選択する際に、児童に職業を与えることではなく、児童に自分の長所と世間の職業とを知らせて、職業を選択する際に誤りのないように準備をさせることだ」と解説しています。
戦後、職業指導は「職業安定機関」と「学校教育」二つの場面で主に行われてきました。
「職業安定機関」では就職を希望する卒業年度の生徒や学生、他に一般の求職者や中高年齢者、障害者など多様な人々を対象として、職業紹介を前提として行われていくようになりました。
一方「学校教育」では中学校や高等学校において、就職を希望する生徒だけではなく、進学を希望する生徒、家業や家事に従事する生徒などの全生徒を対象に卒業後の進路決定を援助するために行われてきました。
最近では職業安定所における職業指導、学校での学校進路指導、この二つに加えて産業界で行われているキャリア形成を援助する活動も含めて、キャリアカウンセリングと呼ぶことが一般的になってきています。
このようにキャリアカウンセリングは昔、「職業指導」という考え方だったことがわかります。
現在では職業指導というやや一方通行的な考えから、個人が自由に自らのキャリアを描くための支援というキャリアカウンセリングが普及するようになってきています。
多くの人は、いくつかの職業や会社を経験し人生の中で個人特有のキャリアを描きます。個人のキャリアの方向性と組織が望むキャリア開発の方向性が一致していれば、お互いにメリットがあるため社員は意欲的に仕事に取り組むことができ、組織の成果に貢献するでしょう。
しかしそうでなければ社員は離職してしまいます。
そのため、組織は組織の望むキャリア開発を一方的に求めるのではなく、双方が調和を取りながら進められるキャリア開発の実施が必要となります。
これは個人が主体となりキャリアマネジメントを実施していくことを意味しています。
これから社会人として働く若者などの若年世代ではキャリアの展望はまだまだ変容していく可能性が十分にあります。そのため「キャリアの方向性や自分の価値観に沿うように自らのキャリア形成をマネジメントする」ことが大切です。
「個人が自らのキャリアをマネジメントする内容」とは
①職業や会社の選択
②所属する組織内のキャリア発展
③エンプロイアビリティや組織を超えた専門能力
などの三つが挙げられます。
つまり個人のキャリアは一つの組織や、職業に縛られない「変幻自在なキャリア」(Hall,1976)であり、世界情勢の変化や求められる仕事が物凄いスピードで変化している時代に必要なスキルとも言えます。
エンプロイアビリティとは
エンプロイアビリティ(empl oyability)とは「雇用され得る能力」のことです。
個人が一職業人として雇用され続ける、また雇用されるための能力という概念です。私達を取り巻く雇用環境や産業構造の変化に自在に順応し、迅速に転職等ができる能力でもあります。
エンプロイアビリティは、まさに労働市場においての「個人の価値」です。個人の経験と努力が結果として現れていきます。これまで企業に依存した働き方をしてきた人はこのエンプロイアビリティを獲得できずに、思わぬ転機に順応できない可能性があります。これからの時代には必須のマネジメントと言えます。
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