第3章 精神分析

この章では、精神分析理論について学んでいきます。

精神分析は、オーストリアの医師ジグムント・フロイトが始めました。

精神分析理論

フロイトが精神分析を始めるきっかけとなったものはヒステリー」と呼ばれる心の病でした。

ヒステリーとは、心的ストレスからの自己防衛として、自己同一性を失う神経症の一種です。自分が誰か理解不能になったり、複数の自己を持ったりする病気です。

その後、フロイトはクライエントの幼少期の親との関係性がカウンセラーを相手に再現されることに気がつきました。

それを「転移」と呼び、その転移を解消することが治癒に繋がると考えました。

またフロイトは心の構造についても考えました。

「エス」は無意識の欲望や感情で、自我」はエスをコントロールし、「超自我」は良心のような働きをしています。

フロイトはエスを意識化し、自我の統制下に置くことだと考えるようになっていきました。

この中でも「自我」は不安や葛藤が大きくなりすぎないように調節する働きも担っています。また自我の「防衛機能」にはいくつかあります。

防衛機制

防衛機能とは自分自身の心を守るための「防衛装置」のような役割を持っています。自分にとって耐えがたい現実が起こった際に、心が破綻するのを防ぐために事実を歪めて受け止めようとする働きがあります。時に自由を奪い、不適応を起こし、心の病が発生することもあります。

以下主な防衛機能をご紹介します。

抑圧

苦痛な感情や記憶を意識から追い出し、無かった事として無意識へと閉め出すこと。

合理化

満たされなかった欲求に対して、適当な理由をつけて正当化したり、責任転嫁したりすること。

合理化の有名な例として、イソップ物語の「酸っぱいぶどう」があります。森を歩いていた狐が、高いところに実っているぶどうを採ろうとしたお話です。

狐は手を伸ばしたり、気を揺さぶったりと様々な手段でぶどうを採ろうと必死になるのですが、結局そのぶどうを採ることはできませんでした。

そこで狐は「あんなぶどうなんてどうせ美味しいわけがない。きっと酸っぱいぶどうだ。あんな酸っぱいぶどうなんていらないさっ」と自分を納得させたというお話です。

昇華

社会で認められない欲求を、社会に受け入れられる価値ある行動へと転じること。

同一視

自分にとって重要な他者と自己とを同じものと見なすこと。

例えば恐怖の対象相手と同じ行動をとる行為など。

投影(投射)

多くは望ましくない自分の感情や考えを他人のものであるとすること。

反動形成

ある抑圧を行った時に、それと正反対の行動を取ること。例えば好きな人に嫌いな態度を取ったり、嫌いな人に親切な態度で接したりすること。

引きこもり、逃避

適応ができない時にその状況から逃れること。例えば会社に行く時間に体調が悪くなり、行かなくても良いと分かった途端に治ってしまう事など。

退行

以前の発達段階へと戻る事。赤ちゃんがえりなどです。

補償(代償)

ある事柄に対し劣等感を持っている際、他の事柄で優位に立ってその劣等感を補おうとする事。外見にコンプレックスがある人が有名大学に入って人より優位に立とうとする行為などです。

置き換え

自分の欲求が満たされないために代理となるものにその欲求をぶつける事。八つ当たりなどがその例です。

防衛機能は誰しも自分ではあまり気がつくことはありません。幼い頃からの様々な経験を通して知らずに身につけてきたと言えます。

キャリアカウンセリングの場ではクライエントのものの受け止め方が今抱えている問題に大きく関わっていることがあります。

そこに寄り添い、気付かせ、クライエントの自己成長を促す援助が必要となります。

練習問題

この章で学んだことを確認しましょう!