第4章:消費者行動の心理

徹夜して並んででもほしい

モノより名誉

たとえば、スマホの新機種が発売されると、徹夜で並ぶ人々の様子がニュースで取り上げられます。いち早く手に入れたいという気持ちもわかりますが、何がそれほどまでに熱狂させるのでしょうか。

もちろん商品にも魅力があって、売り切れてしまうのが心配だとか、ずっと待ちわびていたという理由もあります。しかし、徹夜してでも手に入れたい理由の多くは「優越感」を満たしたいからです。

誰よりも早く手に入れて、SNSなどで「新機種ゲット」と投稿したり、友達に自慢して羨ましがられたい気持ちがある。さらに、行列に一番乗りした人はマスコミなどで取り上げられることもあって、優越感に加えて「名誉欲」も満たされます。

こうした傾向は、女性よりも男性に多く見られる。男性ホルモンによって競争心があおられやすいことが関係しています。

参加しないと損

行列や人だかりを見ると「何かあったのかな?」と足を止める人も多いはず。そこには、他人と同じことをしようとする「同調心理(行動)」が働いています。

人は社会的動物なので、本能的に他人がやっていることと同じことをしようとします。同調心理は「社会的リアリティ」があると起こりやすくなります。これほどまでに人が並ぶならきっと得をするに違いないと思い込んで、自分もあやかろうとするからです。

さらに、人は孤立することや孤立を恐れます。自分一人が取り残されないように、大勢が参加していることに自分も加わりたい、仲間になりたいという気持ちから行列に並んでいます。

ブランド品を持って自分に箔づけ

社会的価値を高める

男女問わずにブランド品が好きな人は多いですが、これほどまでにブランド品が好まれるのは、あこがれやリッチさの象徴であるからです。ブランド品を所持することで自分の社会的価値を高めることができるからです。

つまり、優越感にひたりたいということ。これを「グローリ・バス効果」といいます。

グローリ・バス効果は日本語で「栄光欲」といって、自分以外の人や物の栄光にあやかろうとする心理です。ブランド品以外にも有名人と知り合いだと自慢することなどにもグローリ・バス効果があります。

また、ブランド品を購入する際にお店で丁寧な対応をされるため「お姫様気分」「王様気分」を味わえます。これが自尊心を大きくくすぐるということも影響しています。

個性を表現

人がブランド品を好むのは、あこがれやリッチさだけではなく、そこに商品の価値を超えた「付加価値」があるからです。

そもそもブランド品は商品そのものが上品であり、一流品と判断されています。デザインやコンセプト、使用する原材料、品質管理などに独自のこだわりをもっています。それがブランド品の特色となる。これを「一時的価値」といいます。

たとえば「〇〇のバッグはメンテナンスが素晴らしいから一生もの」「✕✕は全部オーガニックで安心」といったような感じです。さらに、ここに「二次的価値」が加わります。

つまり、そのブランド品を選ぶことで「一流品しか使わない自分」を周囲にアピールできます。このような付加価値があるからこそ人はブランド品に惹かれます。ブランド好きの人は「限定品」にも弱い傾向がありますが、これも「ここでしか買えない」という付加価値があるからです。

流行は「差別化」と「おそろい」

仲間外れになりたくない

最近では情報のスピードが速く、流行する兆しが見えた途端に、一気に火がついてブームになります。そうなると、人は乗り遅れまいとして一斉に流行に走ります。

このように流行に敏感に反応して、その流れに乗ろうとするのは「同調行動(心理)」が働くからです。中には単なるミーハーな人もいますが、大抵は学校や職場で話題になったとき「仲間外れになりたくない」と思うからです。

特に若い世代では「遅れている」と思われるのが恥ずかしいと思う風潮が強いです。友達より早く流行を察知し、流れに乗ろうとします。その一方で、流行のものを嫌がる人もいます。このタイプは自分が新しいものを発見したいからで、人より優位に立ちたい気持ちが強い人に多く見られます。

少数の変わり者から流行が始まった

流行りものが始まるきっかけは、他の人と同じは嫌とか、既存のものと差別化を図りたい人がいるからです。これを「イノベーター(変革者)」といいます。

こうして生まれた新しいものはある人に反発されますが、それを受け入れて賛同する人達=初期採用者がいる。いわゆる「やり手」の人たちです。すると、この様子に賛同するミーハーな人たちが徐々に増えてきます。

最初は「何これ?」と言われていたものが、口コミなどによって大勢の人が知ることになると、大量の後期追随者が発生する。これによってブームになると爆発的に商品が売れたり、流行語になったりする。そして流行が終焉を迎えると、乗り遅れた人だけが残ることになります。

価格設定で高級感・お得感をつくり出す

高ければ品質が良い?

モノを見る目をやしなうのは簡単ではありません。余程の目利きでない限り、自分の判断に自信が持てるものではない。そんなとき、多くの人があてにしているのが「社会的リアリティ」です。

周囲の人の判断、つまり社会的に認められている尺度を判断基準にする。社会的リアリティが深層心理にあると、無意識のうちに「安いものは低品質、高いものは高品質」と判断します。

判断のヒューリスティック」が働いて、直感的な判断をするようになります。

利き酒による実験でも、判断のヒューリスティックが見られました。6種類の値段の異なるワインを利き酒してもらったところ、高い値段がついているワインを高品質と感じる人が多いという結果が出ました。

魔法の「98」の数字

スーパーなどで末尾が「98」になっている価格表示をよく見かけます。このようにあえて端数にすると、値段を引き下げているように思えてお得感・割安感が増します。

100・200などの「00」というキリのよい価格より、端数にした方が安く感じるというのは万国共通であり、アメリカでは「99」、イギリスでは「95」という端数がよく用いられています。

心理学者のシンドラーバリアンは、価格表示の末尾が「99」「88」「00」の3つの商品カタログを用意して、売り上げを調べる実験を行いました。すると、アメリカの定番である「99」という価格表記のカタログの売り上げが最も高く、本来であれば最も売り上げが少ないはずの「88」と、最も売り上げが高いはずの「00」表示のカタログでは、売り上げがほぼ同じでした。

このように、国によってお得に感じる数字は違えど、端数価格には同様の効果があります。

「〇〇なあなた」と呼びかける広告

ピンポイントな呼びかけ

テレビでは毎日多くのCMが流れていて、あの手この手で消費者に訴えかけています。中でも最近多いのが「ダイエット中のあなた」だったり「お肌の乾燥が気になる女性に」といったように、ピンポイントに呼びかける広告です。なぜかこのような広告は耳につきます。

その理由は「カクテルパーティ効果」によるものです。脳には自分に必要な情報をピックアップする働きがあり、無意識のときでも自分が気にしていることに反応します。

これは人込みやざわついた場所でも自分の名前を呼ばれたとき、しっかりと聞こえるのと同じ仕組みです。

確認問題

第4章で学んだことを確認してみましょう。


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