第3章:秘書の役割と職務

秘書の分類

秘書がどこに所属しているかによって、4つに分類する事ができます。

個人付き秘書

個人付き秘書とは、特定の個人に付く秘書です。
この秘書はどの部門にも所属しないで、個人に専属で付きます。
特定の上司一人につくので、命令系統が一つであり、仕事範囲が明確です。

秘書課秘書

秘書課秘書とは、トップマネジメントに付く秘書です。
トップマネジメントとは主に「社長・専務・常務」を指し、秘書課に所属しながら秘書一人で複数の上司の補佐や、チームで複数の上司の補佐をします。
しかし、秘書課に所属していても、実際には特定の上司に専属で付くことが多いです。

兼務秘書

兼務秘書とは、ミドルマネジメントに付く秘書です。
ミドルマネジメントとは主に「部長・課長」を指し、上司が統括している部門に所属して、部門内の業務をしながら上司の補佐も兼務していきます。

チーム秘書

チーム秘書とは、プロジェクトチームや研究部門などのチームに付く秘書です。
チーム運営を円滑にするためにも、チーム全体を補佐していきます。

秘書の機能・役割

秘書の機能は、上司が本来の仕事に専念するため、雑務から身の回りの世話を引き受け上司を補佐することです。
秘書の役割は、補佐機能に基づき、日程管理・来客接遇などの業務をすることです。
さらに、その役割に基づいて個々の細かな日々の仕事も行うことになります。

日程管理は「面会予約の受け付け・取り次ぎ」「予定表の作成・記入」といった仕事を行っていきます。
しかし、秘書の役割・個々の仕事は全て、上司を補佐する機能がベースになっていることを理解しておきましょう。

秘書の補佐機能

上司は経営管理を行うという機能を担っています。
それに基づいて、上司は様々な経営判断をしながら決定を行う役割を果たしています。
それに対して秘書は、そのような機能・役割を持つ上司を補佐する機能しかありません。
この点を正しく理解していると、上司の本来の仕事を秘書が代行する関係にはないことが分かります。

仕事に対する基本姿勢

秘書の仕事は、職務権限内で上司を補佐することです。
どのような場合でも、上司の代理をすることはできません。
秘書としての立場をわきまえながら、最善を尽くして補佐していくことを心得ていきましょう。

定型業務以外は指示・許可を受ける

上司と相談して仕事の進め方が決定している定型業務以外の仕事は、必ず上司の承認を得てから行いましょう。
決して、秘書の勝手な判断で仕事を進めてはいけません。

上司不在時の対応

上司が出張・外出などで不在の場合も多くあります。
また、不在中に上司との連絡が取れないときに、どうしても上司の判断がすぐに必要な状況がある場合には、上司の代理人か秘書課長に相談して指示を受けるようにしましょう。

主観的な解釈・感情に左右されないように

所詮、雑務だからと軽く扱ったり、嫌な仕事を後回しにしたり、憶測に基づいて行動しないようにしましょう。
このような場合には、仕事にミスが起きやすく後々大きな問題になるケースがあるので、雑務だからと軽く扱わず、丁寧な仕事を心掛けましょう。

上司への進言の仕方

基本的に、秘書が上司に対して忠告・進言をすることはありません。
しかし、時には上司から意見を求められることもあるでしょう。
そのような時に次のポイントを参考にしましょう。

  • 上司の健康や食事・服装は失礼のないような言い方でアドバイスをする
  • 上司の勘違い・ミスなどによって、上司の仕事に影響を与える場合には言い方に注意して進言する
  • 人に対する評価を聞かれた場合は、感情を入れず事実のみ話す

職務限界と守秘義務

秘書は、上司を補佐する機能を持っていますが、上司の本来の仕事の代理をすることはできません。

上司の代行は越権行為

越権行為とは、自分の権限を越えた行動を取ることを意味しています。
したがって、秘書が代行できるのは、上司の雑務に関することだけできます。
しかし、越権行為には注意が必要で、秘書が業務に慣れてくると自然に上司の業務を行ってしまうこともあります。
つい忘れがちになってしまう、次のような越権行為に注意しましょう。

  • 代理として各種行事に参加
  • 決裁書・稟議書などに押印
  • 無断でスケジュール変更
  • 無断で面会予約を受ける
  • 上司の部下に指示
  • 無断で会合の出欠の決定

上司の仕事・私事には干渉しない

仕事に干渉しない

上司の仕事に干渉することは、上司の仕事の妨げになることもあります。
以下のようなことに注意しましょう。

  • 仕事の詳細・内容を知ろうとする
  • 仕事内容に必要以上の口出しをする
  • 上司の不在時に、決裁印を押す人を決めてほしいと頼む
  • 上司の離席時に行き先を言うように頼む

私事に干渉しない

上司の私事は、仕事に必要な範囲で知っておく必要があります。
しかし、必要な範囲を超えて深く立ち入ることはNGです。
以下のようなことに注意しましょう。

  • 私的な行動を把握しようとする
  • 私事に必要以上に強い関心を持つ

機密は何があっても漏らさない

秘書だけではなく、企業で働く社員には仕事上で知った機密を漏らさない守秘義務があります。
特に秘書は企業のトップと接する機会が多く、企業にとっての機密情報を知る機会が日常的にあります。
また、上司のプライバシーも知る立場にあることから、秘書として働いていると機密情報を多く知ることになります。
これらの機密情報を気軽に他人に話さないように、細心の注意を払うことが重要です。

確認問題

第3章で学んだことを確認してみましょう。