第2章:秘書に必要な資質・能力

秘書は、臨機応変な対応や柔軟性が必要となってきます。
型通りの対応のみではなく、様々な状況に応じた対応ができる能力が要求されます。
真面目であることは素晴らしいことですが、時にはユーモアやウイットのセンスも身に着けておきましょう。

秘書に求められる人柄

まず、基本的に秘書に求められる人柄は「誠実・明朗・従順・機密を守る」ことです。
しかし、レベルの高い秘書として上司を補佐するためには、次のような資質も必要です。

  • 心身の落ち着き:どのような状況でも冷静な対処ができる
  • 寛大さ:相手を認めて、決して人を責めない
  • 臨機応変な行動:機転を利かせて、素早い行動ができる
  • 柔軟な思考:固定的な考えをせずに、様々な考え方ができる

常に向上心を持つ

秘書は、職務に関する専門的な知識だけではなく、幅広い分野の知識が要求されます。
そのためには、常に探求心・向上心を持ち続けることが必要であり、日々勉強していくことが大切です。
以下の分野は、特に積極的に勉強していくことが求められています。

専門知識

  • 外国語の習得・国際共通語である英語の知識は重要
  • 最新機器・パソコンの操作
  • 上司の業務に対する知識
  • 企業組織・法律・税金・財務に関する知識

社会事象・政治経済・人間関係に関する知識

  • 対人関係論・心理学などの人間性に関する知識
  • 時事問題・最新科学・スポーツ・芸術などの社会事象の知識
  • 為替相場・株式市況・政局の動向・国際関係問題などの、政治や経済の知識

秘書に求められる能力①処理能力・行動力

秘書に求められる能力の1つ目は、処理能力・行動力です。
様々な仕事を任されている秘書は、仕事を速やかに処理していく能力が必要です。
そのためには、無駄のない動き、先を読んで素早く手を打つ行動力が重要です。

処理の基本

細かな仕事が断続的に積み重なるのは、秘書の仕事の特徴です。
様々な仕事を素早く確実に処理できるかが、秘書の腕の見せどころであり、仕事に関する処理能力を高めるためには、以下のような基本的な考えを理解しておく必要があります。

自分の仕事に責任を持つ

自分から連絡すべきことを先方にやらせたり、先輩・同僚に仕事を押し付けることは責任感に欠ける行為です。
引き受けた仕事は、自分で責任を持って処理するのが鉄則です。

不満より提案

仕事の進め方・仕事量に対して不満を言ってしまえば、評価は下がります。
問題点は、どうしたら改善できるのかを提案することが大切です。

困った場合は早めの対処

仕事が重なって対応が難しくなる場合、早めに上司に報告する必要があります。
一人で抱え込んで期日に間に合わなければ、それこそ大問題です。
先を見越した対策を立てて処理していきましょう。

仕事の期限の厳守

どのような仕事にも期限があります。
仕事の優先順位・進め方を考えて、期限は必ず守るようにしましょう。
間に合いそうにない場合は、早めに上司に相談し、応援を求めるなどの手を打つ必要があります。

行動力

上司に指示されたことを、要領よく処理していくのも大切ですが、なんでも積極的に素早く行動する事も重要です。

スピーディーな仕事を意識

指示された仕事を素早く処理するためには、その仕事に何が必要かを知っておくことが大切です。
社内の各部署にどのような資料・データがあるのかを日頃から把握しておく必要があります。
また、仕事をスピーディーに行うためには、以下のことを心掛けましょう。

  • ポイントを押さえて行動し、無駄な動きを避ける
  • 他部署から資料を借りる場合には、事前連絡をして無駄な時間をつくらない
  • すぐに行動できるように、前準備をしておく

軽いフットワーク

秘書は、敏速な行動が求められます。
状況に合わせて何をすべきなのかを素早く理解・行動する必要があります。
以下のことに注意して、軽いフットワークを心掛けましょう。

  • 常にきびきびした動作をする
  • 面倒・気が進まない仕事も気軽に引き受けて、すぐに処理をする
  • 1人で考えすぎたり迷ったりしない。分からないことは周囲からアドバイスをもらう

秘書に求められる能力②判断力

秘書は上司の指示に従うことが鉄則ですが、状況によっての判断が大切です。
会議中に電話の取り次ぎはしないように」と指示されても、緊急時には取り次ぎが必要な場合もあります。

適格な判断で行動

秘書は補佐役として、様々な状況でも的確な判断が求められます。
そのために、次のようなことを心掛けましょう。

  • どのような対処をしたら、上司・会社に良い結果を与えるのか理解しておく
  • 上司の立場をよくする言動を心得る
  • 何かあった時には機転を利かせて、素早い対処ができるように準備をしておく
  • 突発的なことに対する心構え
  • 上司に関する人間関係の把握

取り次がないように指示があっても取り次ぐ場合

上司が集中したい時、面談・会議にはいる時などに「電話・来客の取り次ぎはしないように」と指示されることもあるでしょう。
しかし、この言葉を鵜呑みにしてしまい、問題が起きてしまう事例もあります。
必ず頭に入れておくべきことは「緊急の場合は除く
次のようなことを考慮して判断するようにしましょう。

上司に取り次ぐ判断基準とは?

これから紹介するのが、取り次ぐ判断基準です。
しかし、面会・電話応対の最終判断は上司が決定するので、その後の指示を受けることになります。

  • 事態の重要度・緊急性で判断
  • 相手と上司の関係で判断
  • いつでもあえる・そうでないかで判断
  • 遠距離からの来訪者かで判断

取り次ぐ場合の具体例とは?

以下の場合は基本的に上司に取り次ぐようにしましょう。

  • 取引先の転任・着任の挨拶訪問
  • 社長などの、上司の上役からの呼び出し
  • 紹介状を持つ客の訪問
  • 緊急の用事で部下が訪れた場合
  • 上司の家族からの緊急電話
  • 家族・社員の事故や急病

秘書に求められる能力③理解力・洞察力

理解力」とは、上司の意向・指示を正確に理解することです。
洞察力」とは、仕事の流れを読み、次に何が必要かを察知して、準備・行動を起こすことです。

上司の意向を正しく理解

上司は、秘書に指示を出すとき、尋ねるときには丁寧に説明することは少ないです。
また、秘書が慣れてくると更に省略するので、そういう時にもすぐに対応できるようにしておく必要があります。
そのために、以下のことを心掛けておきましょう。

  • 上司との前後の話の流れから、言いたいことを推察して理解する
  • 上司の最近の関心事を把握
  • 上司の人間関係を把握

仕事の流れを読む洞察力

秘書に必要な洞察力とは、仕事を流れを読んで次を見抜く力です。
例えば、上司の一連の言動から、次にどのような資料が必要になるのかを推測して、それに対して自分がどうするべきかを察知して仕事をすることが大切になります。

秘書に求められる能力④人間関係処理能力

人間関係処理能力は、上司からの評価を左右する大切な能力です。
秘書が対人関係を良好に保つことで、上司がスムーズに仕事をすることができます。

社内の人への対応

秘書は社外の人だけではなく、社内の人に対しても適切な対応が必要です。
不適切な対応の場合、社内での上司からの信用も落としてしまうこともあるので注意が必要です。

上司の上役への対応とは?

社長・会長などの、上司にとっての上役からの指示・命令は最優先して対応しなければ、上司の評価を落としかねません。

上司の同僚への対応とは?

上司の同僚への対応は、仲の良悪に関わらず、失礼のない対応を心掛けましょう。
仕事上は公平に付き合い、誰に対しても適切な態度で接していれば、どこに配属されてもスムーズに仕事をすることができます。

上司の部下への対応とは?

上司の部下であり、秘書の部下ではありません。
特に注意が必要なのは、上司の命令・指示を伝えるときに言葉遣いや態度には十分に注意しましょう。

社外の人への対応

社外の人への対応は、社内の人以上に慎重な態度で接する事が必要になります。
重要な取引先・そうでない取引先や、会社の大小で対応を変えずに、誰に対しても適切な態度で接するように心掛けましょう。

確認問題

第2章で学んだことを確認してみましょう。